一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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豆苗が木になった?

質問者:   一般   青子
登録番号4994   登録日:2021-02-19
この間はじめて豆苗の再生栽培をしました。一回切ったものを、根だけ水につけておくと葉がまた出てくるというものです。

水換えや日射に気をつけて栽培していたのですが、元の製品を同じくらいの長さになった時、茎部の根本がやや茶色く変色している事に気づきました。

観察した感じだと、腐っているわけではなく、茎の表面が硬くなっているような様子で、なんだか表面だけ木になってしまったような状態でした。

豆苗(=エンドウ)がこの高さ(根の厚さも併せて20センチほど)で木になるものなのでしょうか。この現象について詳しく知りたいです。
青子 様

植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。
伸長生長している細胞の細胞壁はセルロースなどの多糖とタンパク質から構成されており、このような細胞壁を一次細胞壁といいます。生長が終わった細胞では、一次細胞壁にさらに多糖、たんぱく質に加えてリグニンが付け加わって二次細胞壁が作られ、強度を増します。リグニンはフェノール性の化合物が重合した化合物で、樹木の木部細胞の細胞壁に多量に含まれ、幹の強度を高めるのに役立っている物質です。
植物の組織に傷がつくと、水分が蒸発したり、病原菌の感染の恐れがでてきたりします。植物はそれを防御する仕組みを持っています。抗菌物質を作ったり、菌の細胞壁を分解する酵素を作ったりしますが、傷がついた組織周辺の細胞でリグニンの合成が起こり、細胞壁を強化することで物理的に病原菌の侵入を阻止します。質問内容から茶色に変色したのは成長が止まり、成熟した状態の組織で、切断した部位とも近いと思われますので、リグニンの蓄積が少なくとも原因の一つだと思われます。
茶色に変色したことも説明できます。紙を作る過程で樹木からパルプを作る場合、樹木の木部にある多量のリグニンが含まれてきます。リグニンを含んだまま紙を作る時には、リグニンの発色を抑える処理をしますが、時間と共にその働きが弱まり、色がでてきます。新聞紙などを長期間置いておくと茶色に変色するのはそのためです。
樹木に変わったのかという点については、そのようなことはありません。辞典などで木本植物(樹木)の定義を見ますと、「茎や根において肥大生長により多量の木部を形成し、その細胞壁は多く木化して強固になっている植物。地上部は多年草」(岩波生物学辞典)となっています。エンドウが多年草に変わったわけではありませんし、植物体全体にわたって肥大生長により多量の木部を形成し、その細胞壁が木化して硬く強固になったわけでもありません。でも、組織が硬く、変色したところが樹木に似ていると感じられたのは、もっともかもしれませんね。
なお、本コーナーの登録番号0940, 4820 が参考になると思います。
庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-03-07
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