一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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落ち葉について

質問者:   会社員   sunupea
登録番号4996   登録日:2021-02-20
枯れた落ち葉が、虫や微生物によって細かく分解され腐葉土になるのは分かりますが、植物の種類にもよるのかもしれませんが、枯れている落ち葉自体にも動物が食べて得られる栄養素ってあるんでしょうか?

よろしくお願いします。
sunupeaさん

みんなのひろば「植物Q&A」へようこそ。質問を歓迎します。
回答は、九州大学大学院農学研究院の久米篤教授(理学博士)にお願いしました。

【久米先生の回答】
森の樹木は、毎年、新しい葉を展開し、古い葉を落としています。落葉広葉樹林でも常緑針葉樹林でも1ヘクタールあたり毎年おおよそ3トンくらいの葉を落とします。これは、幹の増加量に匹敵する量です。毎年、これだけの落ち葉が地面に落ちたら林床の落ち葉の厚さはどんどん増えていくように思われますが、そのほとんどは、1年間で土壌動物によって細かくされて分解されてしまいます。秋に踏んだ落ち葉は、翌年の秋にはほとんど残っていないことになります。
落葉・落枝は、主にセルロースやヘミセルロース、リグニンなどから構成されていますが、分解するにはセルロースを分解するセルラーゼやリグニンを分解するペルオキシダーゼなどの酵素群が必要で、そのままではほとんど分解されません。土壌動物の中でも特にミミズ類は大食いですが、面白いことにミミズも含めた土壌動物は、セルラーゼを分泌することが出来ません。多くの場合、腸内の共生微生物によって分解され、その産物を宿主の土壌動物が吸収します。ただし、リグニンを分解・消化することは難しく、ほとんどが糞として排出されています(キノコの仲間だけが分解・吸収できます)。
この仕組みは陸上のほとんどの草食動物に当てはまり、特にウシやシカ等の反芻動物では、胃が特殊化して胃中に微生物を共生させ、セルロースやヘミセルロースを効率的に分解吸収しています。反芻胃内では微生物による発酵が生じ、酢酸やプロピオン酸、酪酸などの有機物が生産され、胃によって吸収されます。このような反応を促進するには、食べたものを物理的に細かくすること、すなわち反芻が効果的です。また、胃内の微生物は最終的には消化・吸収され、窒素源として吸収されます。
落ち葉は乾燥していることに加えて、生葉に含まれていた光合成タンパク質や、ビタミン、ミネラルなどの成分がほとんど含まれていないため、餌としては質的にはかなり低下していますが、微生物の力を借りることで、セルロースを利用可能な餌資源とすることが出来ます。日本のシカの場合、おおよその傾向として、良質な餌が不足してくると落ち葉を餌にすることが観察されています。


久米 篤(九州大学大学院農学研究院)
JSPPサイエンスアドバイザー
櫻井 英博
回答日:2021-03-13
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