一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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蕾の期間が長期間にわたる植物

質問者:   一般   まさ
登録番号5005   登録日:2021-03-01
近所のモクレンは、例年夏に少しと春先に多数咲く二季咲きです。
昨年6月か7月頃に小さな木ですが100以上蕾が付いていました。夏にこんなに咲くと思い楽しみにしていたが数花開いたのみでした。残りは変化無くやがて葉が落ち、2月になって気がつくと数が減ること無く全部が大きな蕾に成長し赤い花弁がのぞき咲き始めました。
この花は大半が約8ヶ月後に開花したことになります。
これほど長く蕾の内部で何があったのでしょうか。細胞が増えるのに時間がかかったか、細胞が膨らむのに時間がかかったと考えました。他にも長期間蕾の例はありますか
まさ様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。地域にもよりますが、そろそろモクレンの花が開く頃ですね。赤い花ということですが、紫モクレンのことでしょうか。私の家にも一本あって、毎年3月終わりから4月にかけて花を楽しんでいます。
さて、ご質問のご近所にあるモクレンのことですが、二季咲きのモクレンというのは聞いたことがりません。残念ながら花成の状況がはっきりしませんので、その特定のモクレンの木について説明することはできません。例えば、ご質問の状況は今年限りのものなのか、例年は春先に咲き、夏近くにどのくらいの割合で咲くのか、春にできている蕾のサイズは皆同程度なのか、春先にいったん咲き終わり、夏になって新しく咲き始めるのか、少しずつポツリポツリと咲くのか。前年の気候はどうであったか、生育環境に変化はなかったか、などなどが不明です。したがって、ここでは樹木の花成のことについて一般的に説明いたします。本コーナーの登録番号1104, 4243をまず読んで下さい。

モクレンにはいろいろな栽培品種があります。中には四季咲きモクレンというのがあるようですが私は見たことがありません。四季咲きならば日長や気温にはあまり影響されず、年中花がつくはずですので、ご質問のモクレンはそのタイプではないですね。モクレンは通常花期が終わって、6月から7月にかけて新しく花芽が形成されます(花芽の形成のメカニズムについては本コーナーで「花芽」「花芽形成」などの語句で検索してださい。関連質問がたくさんありますので、その中で適当なものを選んで読んでください)。新しく分化してできた花芽はしばらくそのまま大人しく(休眠)しています。これは葉で作られる成長を抑制する植物ホルモンによるものです。秋になって葉の働きが弱まり、そして最後は枯れて落葉すると、休眠していた花芽は眠りから覚めることができるのですが、気温が低くなるため、また花芽の中に残存していた成長抑制ホルモンがあると成長は進みません。残存する成長抑制ホルモンは気温の低い期間中には減少していきます。春になって気温が上昇すると、花芽は成長を開始し、開花に至ります。休眠の期間は生育の地域/気候にもよります。10ヶ月くらいは普通ですが、気温などの状況により開花が早まったり、遅れたりすることは珍しくありません。このスキームの外れた時期に花が咲くのは「狂い咲き」と呼ばれています。紫モクレンはことに狂い咲きしやすい樹木のようですね。私の家の紫モクレンも夏に時々数個の狂い咲きがあります。
夏に咲く狂い咲きの花は、6~7月に新らしく形成された花芽が開花したものではないと思います。そんなには早く花芽の成長が進むとは考えられません。おそらく前年度に他の花芽に遅れて形成された花芽なのか、休眠が解除された後も何らかの原因で成長速度が遅かったことが原因かと考えられます。同じ個体に付く花芽でもその枝の葉の具合や、局所的な日照の違いなどで休眠や成長のの速度に違いがあっても不思議はありません。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-03-10
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