一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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気温と光合成の活発度の関係について

質問者:   その他   おにわばん
登録番号5013   登録日:2021-03-09
熱帯、亜熱帯原産のシマトネリコ(台湾汐路)を北関東で庭に植栽し、6年たちました。この冬の冷え込みはとくに厳しく、連日氷点下6度という時期もあり、樹冠の葉がかなり枯れました。これから春に向かい、光合成が活発になって、再び元気を取り戻してほしいものです。そこで、光合成の活発さと気温の上下は関係性があるのでしょうか。あるとすれば、樹種にもよりますが、何度くらいから適温になり、ピークは何度なのでしょうか。
あるいは、気温ではなく、太陽からの光量(日照時間)に関係しているのかも知れず、筋違いの質問かもしれません。
教えてくださいますよう、お願いいたします。
おにわばん 様

この質問コーナーをご利用いただきありがとうございます。

光合成を含めた生体の反応は、基本的には化学反応ですので、温度が上がると活発度(活性)が高まります。ところが一方、反応を可能にしている生体の秩序(酵素タンパク質の構造など)は高温において不安定になるため、高温側においては活性が低下します。以上の結果として、生体の反応には最適な温度ピークが生じます。このピーク温度は生物の種類(樹種)や生息環境によって違いますので、特定の植物についての最適温度をここで答えることは出来ません。生物はある程度の範囲内で環境の温度変化に順応できる仕組みを備えておりますが、その能力についても種類による違いがあります。

ところで、お庭で育てられているシマトネリコの樹冠の葉の一部が枯れたとのこと、残念ですね。熱帯・亜熱帯原産の植物とのことですから、低温に曝されることにより(細胞内の水の凍結が起こって)生理機能が損傷を受けたことが葉枯れの原因であると思われます。葉枯れの部分が樹冠の葉に限られていることが光の関与を暗示し、常緑樹の冬季における光エネルギー散逸のメカニズムとの関連が気になりますが、この問題に関してはもう少し調査が必要かと思います。
佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-03-13
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