一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

花が咲く原理

質問者:   会社員   はーの輔
登録番号5060   登録日:2021-04-30
家でバラを育てています。今は蕾から開花に向かう時期です。

そこで質問ですが、花が咲く原理は、細胞分裂で大きくなった結果花が咲くのか、蝉の羽のように水分で花びらを押し広げて花が咲くのかどちらでしょうか?

もちろん蕾のうちは細胞分裂だと思いますが、蕾が綻んでから開花1日で花径18センチになったので不思議に思い質問しました。
家族内では意見が割れています。
は一の輔 様

植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。

花弁には表と裏がありますが、蕾の時には花弁の表側が蕾の内側に、裏側が外側に向いています。花が開く時には花弁の表側表皮の成長が裏側表皮の成長より速いことで、蕾の時は内側にあった面が上側に、外側にあった面が下になります。花弁の表側と裏側の成長差によっておこるわけですが、この成長は主として伸長生長であることが多くの植物で調べられています。チューリップなどでは数日にわたって花の開閉を繰り返しますが、閉じる時には開く時とは逆に花弁(チューリップの場合は花弁と萼片)の裏面の成長が表側の成長より速いことによります。数日にわたるチューリップの花の開閉に伴い、花弁が顕著に大きくなるのをご覧になったことがあるのではないでしょうか?この場合も細胞分裂ではなく伸長生長によります。伸長生長の時には吸水がおきます。
バラの花でも開花の時の花弁の成長について調べられています (J.Japan Soc.Hort.Sci, 78,356-362(2009))。表皮細胞の数は開花の初期(蕾の時)に増加速度が速く、その速度は比較的早い時期に緩やかになりますが、花弁が伸びだし開花にいたる(開花後期)まで続くようです。開花後期の細胞の大きさの増加は著しく、急激におきますので、花弁の大きさの増加は主として細胞の肥大(伸長生長)によると考えられています。その時期には花弁の生重量も急激に増加していますので、急激な吸水がおきているものと思われます。
バラを育てておられるとのことですが、直径18cmの花は立派ですね。それに、ただ美しいと眺めておられるだけでなく、どのようにして大きくなるかを議論されておられるのには敬服いたしました。
なお、開花の仕組みについて, 本コーナーの 登録番号0344にマツバギクとチューリップ、登録番号1221にマーガレット、登録番号1249にタンポポ、登録番号3765にチューリップで説明がありますのでご覧になって下さい。
庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-05-15
植物 Q&A 検索
Facebook注目度ランキング
チェックリスト
前に見たQ&A
入会案内