一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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亜種ssp.と変種var.の違いについて

質問者:   会社員   とろっぺ
登録番号5064   登録日:2021-05-07
こんにちは。
質問をお願い致します。

学名では種小名の下に亜種(subspecies)と変種(variety)が付く場合がありますが、両者の違いは何でしょうか?

少し調べましたが、
亜種は地域が離れており、基本種と交雑することはない。
変種は基本種の中から異なる特徴をもつものが発生し、基本種の近くで群を形成している。
ような理解かなと思いましたがどうでしょうか?

しかしInternational Plants Name Indexでは、変種から亜種に変更されているものもあり、どういう理解をすればよいのかわかりません。

動物では変種の採用を取りやめているようですが、植物ではそのような経緯はないように思います。

長々となりましたが、亜種と変種の違いをどのように理解すればよいのか教えて頂けますと幸いです。
とろっぺ様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。ご質問内容からすると植物の学名の命名法については既に詳しく調べられていると思いますので、ここではご質問の亜種と変種の関係についてだけを取りあげます。
両者の関係はご理解されている通りですが、もう少し詳しく説明すると、亜種は種の下位、変種の上位という関係にあります。
亜種はその生育地が同種の仲間と地理的に隔離されており、そのために他の地域の同種の仲間との交雑は通常起こらない。しかし、遺伝的に可能である。亜種は地理的隔離のために特徴ある形態を示すことが多い。学名記載上は[subsup.]または[ssp.] と略記し、キャピタル、イタリックを使わない。
変種は種の集団の中で自然に起きた変異(形態、色など)を示すもので、その特徴は継代的に遺伝される。学名記載は[var.]と略記、キャピタルもイタリックも使わない。
種名の命名は最初にそれが命名・報告されたものが基本とされ、その時に対象となった標本が分類の基準となります。しかし、その後研究者が詳しく調査・解析したりして再分類することがあります。変種から亜種に変更されたものや変種からさらにその下位の型(forma:f.)に変更されたものもあります。生物の分類は遺伝子解析の進展に伴って系統的な観点から新しい体系が作られつつあります。いずれ生物種の相互の遺伝的関係はもっと詳しく解明されるでしょう。
ご指摘のように動物では種小名より下位の命名は亜種のみとなっています。1961年以前にvar. として命名されたものは全て亜種に変更されました。ちなみに細菌学の分野でも亜種のみとなっています。植物ではまだ、種・亜種・変種・型のヒエラルキーが使われています。
なお、植物では栽培品種(cultivar: cv.)という変種に相当するものがありますが、これは人為的に選択、改変された、いわばクローンです。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-05-17
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