一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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落花生の殻について

質問者:   会社員   けんぼぅい
登録番号5233   登録日:2021-09-22
 いつも楽しく拝見させていただいております。
 子どものころは昆虫ばかりに興味をもっていた私ですが、大人になって今頃植物に魅了されているこの頃です。自分で種から育てた植物たちは本当に可愛いものですね。

さて、今年はじめて落花生を種から育ててみました。いつも食べている種をまいて本当に芽を出すのだろうかと疑問にしておりましたが、見事に芽をだしてくれました。何より驚いたのは私たちが普段食べているところが鮮やかな緑色に染まっていることです。この歳でもこんなに驚くことがあるのかと新鮮な気持ちになりました。その後順調に種子を得たのですが、種子を眺めていてふと疑問におもうことがありました。
 落花生の種子は外側をおうどう色で網目状の柔らかい殻のようなものがおおっており、少しすき間があいていつも食べている胚乳と胚があると思います。(すこし振るとからから音をたてるのですきまがあいているのかなと思いました。あとすみません胚乳ではなく、子葉ですかね。無胚乳種子のようですので)高校で習った種子の構造を考えると、胚や胚乳のまわりをおおっている茶色のものが種皮になるのかなと思ったのですが、その場合さらに外側にあるおうどう色の網目状の殻はいったい何なのでしょうか?それともこれが種皮にあたるのでしょうか?また、できたばかりの種子をひらいてみると胚をまもるように白くてみずみずしいシャキシャキした構造があるのですが、これは何でしょうか?

質問ばかりになって申し訳ありません、御多忙かとは思いますがお答えいただけると幸いです。
けんぼぅい様

植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。

私も花や野菜をいろいろ育てていますが、自分で育てたものは可愛いですね。お気持ち、よくわかります。
 さて、ご質問についてですが、最初に花の構造と果実や種子との関係をごく簡単に(厳密ではありませんが)整理することにします。被子植物の花は、基本的には外側から萼、花弁、雄しべ、雌しべの順に配列しています。花の中心にある雌しべは先端の花粉が付く柱頭、基部の子房、その間をつなぐ花柱からなっています。子房の内部には胚珠があります。胚珠の外側の構造〈珠皮)に囲まれた内側に花粉からの細胞と受精した受精卵や胚乳細胞があります。これらの組織が成長、成熟すると、子房は果実になり、胚珠は種子になります。したがって、子房の外側の組織が果皮に、珠皮が種皮にになります。受精卵は胚になります。
 この関係をナンキンマメ(落花生)に当てはまてみますと、網目状の殻が子房の外側の組織が成熟した果皮で、胚が発育して大きくなった子葉の外側にある茶色の、薄い組織が種皮です。推察された通りです。
 食用にになる落花生は、成長した胚の子葉ですが、水分が減って寒さなどに強くなった状態(休眠状態)ですが成長している若い組織は水分多く含んでいます。また、ごく若い胚珠では胚乳細胞があります。胚を守るように白くてみずみずしいシャキシャキした構造はそのような状態を反映したものだろうと思います。ナンキンマメは無胚乳種子であることと矛盾することを心配されていますが、無胚乳種子というのは、種子が散布される状態になった時に胚乳がみられない種子ということで、若い胚珠には胚乳があります。胚乳の細胞は子葉(胚)が成長するのに使われると思われます。
庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-10-20
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