一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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植物の実は栄養の結晶?

質問者:   会社員   higoman
登録番号5239   登録日:2021-09-27
≪植物は『実(果実や種子含む)』に全ての(多くの)栄養をため込む性質がある≫
…と言えるのでしょうか?

植物の実や果実、種子など子孫を残す働きのある部位は、その植物本体が土などから得た栄養を集め次世代に渡すための部位と考えているのですが、そのエビデンスが見つからず質問させて頂きました。

上記のような事が植物に対して言えるのか、またそのエビデンスが記載されている書籍をお教え頂けると幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
higomanさん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。

果実(と言えば種子を含みます)に「多くの」栄養素が貯蔵されていますが、種子とそれを包む果肉類における栄養素の機能は違います。それらは「すべての」(植物”個体が持つすべての”との意味と解釈)栄養素ではありません。果実以外に根、茎、葉といった器官が正常に機能するためには「それぞれの器官にある栄養素」(他の器官からの転流もありますが)を使用しています。また、植物によっては、根(例:サツマイモ)、茎(例:ジャガイモ)、葉(例:ユリ、タマネギ)が栄養素の貯蔵器官となって栄養繁殖を支えている場合も少なくありません。

「植物の実や果実、種子など子孫を残す働きのある部位は、その植物本体が土などから得た栄養を集め次世代に渡すための部位と考えている」:細かい表現は別にして概要はその通りです。
厳密には「栄養」は過程であり、その過程に必要な物質は「栄養素」と言います。植物にとっての「栄養素」は通常、根が吸収する無機塩類と光合成に必要な二酸化炭素、水、呼吸に必要な酸素などを意味しますが、種子に貯蔵され次世代の成長、分化に必要な「栄養素」は主として根から吸収した無機塩類と光合成産物を原材料として植物栄養体が代謝変換した炭水化物、蛋白質、脂質、ビタミン類と言った有機化合物です。

 最後に「そのエビデンスが見つからず」との文言がありますが、上記の証拠は、肥料(植物の栄養素)を全く与えなければ植物は枯死する事実、また、常時暗所に置くと枯死する事実、より直接的には胚培養においてショ糖のほかミネラル、ビタミンを含む培地を用いなければ胚は成長しない事実など挙げられます。「そのエビデンスが記載されている書籍」はすべての生物学、植物学の教科書、参考書、その他植物の生き方などを題材とする解説書などです。
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-10-26
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