一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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森林の酸素濃度と山火事の発生について

質問者:   教員   福岡
登録番号5240   登録日:2021-10-06
小学校で教師をしています。
6年生では、植物が日光にあたることで二酸化炭素を吸収し酸素を排出している事を実験で確かめて学びます。
酸素は動物が消費するばかりですが、植物が作り出しているのでなくならない、という流れになっています。
学習後の子どもの感想に、
「植物が酸素を出して酸素が多くなっているから山火事が起こりやすいのかな?」
という疑問がありました。
インターネットで調べる限り関連する記述をみつけられませんでしたし、そもそも森林における酸素濃度が都市部と比べて高くなっているかどうかも、調べきれませんでした。
ご教授の程よろしくお願いいたします。

福岡 様

この質問コーナーをご利用いただきありがとうございます。
地球の表面を覆っている気体(大気)に占める酸素の割合は約21%と非常に高く、この値は都市部と森林の領域で大きくは異なっていないと思います。もちろん、発生源である光合成を営んでいる状態での植物の葉の表面近くでは酸素濃度が高く、逆の場合として、火力発電所の燃焼装置の近くなどの局所領域では酸素濃度が低下していることが予想されます。しかし、大気中の酸素分子は音速をも越える速度で拡散しますので(大気中での気体分子の拡散速度について調べてみてください)、日周期や季節周期などの微弱な変動はあるものの、(地質学的な時間スケールの話しは別として)大気中の酸素濃度は場所に因らずほぼ一定に保たれているものと考えられます。

ところで、カリフォルニアなどで頻発している大規模な森林火災(山火事)の原因は多くの場合は自然発火であるように見受けられます。大気の乾燥によって森林の落ち葉や枯れ草などの水分が失われ、風が吹くことで起こる摩擦によって種火が生まれ、他の乾燥した枯れ葉や枯れ草へと燃え移ることにより火災が拡大しているものと思われます。結論として、自然発火による森林火災の発生は、森林を構成する植物の光合成による酸素濃度の増加に因るのではなく、高温と乾燥の下で発火し延焼しやすい物質の蓄積に因るものと思われます。
佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-10-20
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