一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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キンモクセイの二度咲きについて

質問者:   自営業   マメシバ
登録番号5241   登録日:2021-10-06
今年は多くの地域(東京・神奈川各所)でキンモクセイが短期間に二度開花しているのを目の当たりにしました。毎年開花時期の早い遅いがあるのは承知していますが、一斉に短いスパンで再び開花するのは経験上記憶にないので興味を持ちました。どのようなメカニズム(内的・外的両方の)で起こる現象なのかご教示いただけないでしょうか?
※2006年10月5日付で同様の質問がありますが、15年後新たに分かったことなどがあれば併せてご説明お願いします
マメシバ様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。キンモクセイの2度咲の現象はかなり一般的に見られるようですね。キンモクセイは夏に花芽が形成され秋に開花するのが一般的です。短い期間に2度咲くのは花芽の形成の時期がずれている場合、花芽は一斉に作られても気象条件などの外因が局所的に影響した場合、個体や枝などの部分で栄養など生理条件が異なっている場合などが考えられます。前回の質問/回答(登録番号1066)の時にはこの現象についての原因を調べた研究はありませんでした。実際に明確な原因を特定することは難しいですが、その後、2011年に和歌山大学システム工学部の先生方と和歌山森林局の方とが共同でこの原因究明の実験をした論文(*)が出ています。和文で一般の方にも分かりやすい内容なのでそれを是非読んでください。
ここでは簡単に、それを紹介してしておきます。
この研究はキンモクセイの2度咲きは近年の温暖化の影響であるという仮説を立て、外気温より3度高いグロース・チェンバーで育て、観察を行なったものです。その結果、加温処理は開花開始の遅延、開花期間の長期化、開花期間中に複数回(2、3度咲き)のピークをもたらした。複数回咲きの現象には4つのパターンがある。1)集団内の個体差による開花時期のバラツキ、2)同一個体の枝、花芽の着生部ごとでの開花時期のバラツキ、3)同一箇所の花芽着生部に複数形成された花芽が段階的に開花することによるバラツキ、4)1)〜3)の複合によるバラツキ。
花芽分化の誘導の気温、花芽の発育、開花温度との対応関係のメカニズムは明らかではない。

*中島敦司、山本将功、大南真緒、仲里長浩、廣岡ありさ 夏季から秋季にかけての気温がキンモクセイの開花に及ぼす影響、日緑工誌(J.Jpn.Soc.Reveget.Tech.)37(1):26-31(2011)
ネット上で「キンモクセイ日緑工誌」と検索すれば論文が見られます。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-10-26
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