一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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樹木の実について

質問者:   高校生   りょうすけ
登録番号5243   登録日:2021-10-09
こんにちわ
木を植樹し、いくつかの若い樹木3~4年生の【ヌルデ ツリバナ ウコギ等】を観察していて、やっと雄 雌の木【花】がそれぞれ開花したのですが、雌花には、結実し青い実がつくのに完熟するまでに全て落ちてしまう事があって、まだ咲くには若すぎるのが原因なのか、蟻やコバエ等が沢山花に集っているのに、どのような原理で落ちてしまうのでしょうか?
なにか、お答えできることがありましたら回答宜しくお願いします。
りょうすけ様

 質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。これらの樹々は自然に生育していたものを移植したのでしょうか。それとも栽培されていたものでしょうか。庭木としてはあまり一般的なものではないように思います。樹木の果実の成熟前の落果は多くの果樹の栽培で観察される事なので果樹園芸の分野ではたくさんの報告があり、対策も知られています。それぞれの種類(アンズ、ウメ、カキ、モモ、リンゴなど多種)によって原因も異なるようです。果樹以外の樹木の果実の早期落果についての研究は見当たりませんでしたので、ここでは一般論として話します。
 受粉によって胚珠の中で受精が行われ、胚が作られて種子形成が始まると胚珠を含む雌しべの子房が肥大したり(真果)、花床(偽果)が肥大したりしていわゆる果実が形成されていきます。植物にとって果実の形成は種子の形成を意味し、次世代の繁殖の重要な手段です。そのため果実の形成には多大なエネルギー投資をすることになります。多くの場合受精が行われても、すべてが成熟した果実になる事はありません。果樹栽培では結実した果実を全て成熟させるのではなく、摘果して一つ一つの果実が大きくなるように調整します。
 自然の状態で早期落下が起きるのは、様々な原因があります。環境条件による被害、例えば、高温、低温、日照不足、真夏の直射日光、栽培土壌水分の不足など、また農薬や病害虫による被害、そして生理的落果と呼ばれる樹木の生理的状態が原因となるものがあります。これは受精の不完全、胚形成の不具合などが原因で、果実の形成がかなり進んだ段階では落果するものは栄養不足などが理由とされています。
 自然に見られる生理的早期落果は異常な減少ではなく、樹木が成長のための適正なエネルギー配分の手段として、果実の数が多すぎないように自己調節しているメカニズムという考えもあります。
 観察なさった樹木は移植後すぐのものですか。また、花の着き具合、結実した果実の数(結実率)、部位などによるかもしれませんが、おそらく次のようなことが原因では無いかと想像いたします。樹がまだ若いので、新梢の成長に大部分の栄養分を取られて、果実に十分栄養分(エネルギー)が配分されなかった。あるいは、樹がまだ若いので、体内に前年度の栄養分の蓄積が足りなかった。樹が大きくなっても毎年同じように早期落果があるのでしたら、他の要因を考える必要があるでしょう。生育場所が不適切なのかもしれません。
 なお、果樹の早期落果のことについてはネット上でたくさんの項目がありますので、参考になさってください。
勝見 允行(JSPPサイエンス・アドバイザー)
回答日:2021-11-11
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