一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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根粒菌の観察について

質問者:   教員   ドドレレミ
登録番号5248   登録日:2021-10-14
高校の理科教員です。マメ科植物の根の根粒内部の根粒菌を高校の標準的な光学顕微鏡で観察したいと思っています。資料を調べてみるとゲンチアナバイオレットやグラム染色で観察というものが多いのですが、水で封入したり、酢酸オルセインなど通常の理科室にある染色液での染色で見ることはできますか。50分の授業内で生徒が観察できる実験方法の例がありましたら教えてください。
ドドレレミさん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。

ご質問の回答は根粒を長年研究されておられる愛知教育大学の菅野教生先生にお願いいたしました。
少し補足しますと根粒菌はグラム陰性菌ですから、グラム染色をすれば他のグラム陽性菌と区別することが出来ます。グラム染色液は高校理科教室などでは出入りの業者から容易に入手出来るはずです。酢酸カーミンやメチレンブルー、酢酸オルセインなどは塩基性の色素ですから細胞核(染色体)など酸性成分を染色しますので、すべての細菌などが染色されます。使用は可能ですが菅野先生もご指摘のとおり、バックグランドが問題になるかも知れません。最後の脱色をうまくしないと成功しない例が指摘されているようです。各色素の特性と染色の原理を説明しておくと理解がより深まるでしょうし、事前の予備実験で最適の条件など確かめておけば問題はないと思います。

【菅野先生の回答】
根粒をすりつぶして、乳白色の液を1滴の水をのせたスライドグラスに置きます。スライドグラスの一端を持って、アルコールランプの遠火でゆっくり乾燥させます。その上に、ゲンチアナバイオレット染色液(0.1gのゲンチアナバイオレットを1mLのエチルアルコールに溶解し、蒸留水で100mLにします。)を2〜3滴落として、遠火で蒸気が出るまで、静かに2〜3分加熱して、染色します。最後に、水洗し、カバーガラスで封入し、顕微鏡で観察します。
これは、『作物』(農文協、川田信一郎・村田吉男 編)という書籍に記述されていた方法です。
ゲンチアナバイオレットは、グラム菌を染色する染色液です。グラム菌を染色するための市販の染色液でも問題ありません。実際に試したことはありませんので不確かですが、酢酸カーミンやメチレンブルーでも染色することは可能だと思います。ただ、すりつぶした液には、根粒菌の他に植物の残渣も含まれていますので、根粒菌を染色する染色液を用いた方がバックグラウンドの染色が少ないかも知れません。

菅野 教生 (愛知教育大学 名誉教授)
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-11-15
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