一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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根冠を除去したとうもろこしの幼葉鞘を水平に置いた場合の根の伸長

質問者:   その他   Makohama
登録番号5250   登録日:2021-10-15
いつも、参考にさせていただいています。
表題について、質問させていただきたいのですが、根冠にはコルメラ細胞があり、細胞内のアミロプラストが重力方向に移動してオーキシンも重力方向に移動すると思うのですが、根冠を除去した場合でも、根まで続く内皮細胞内のアミロプラストにより重力が感知され、オーキシンは重力方向に移動するのでしょうか。
茎の内皮細胞にはアミロプラストが存在しますが、根の内皮細胞にはアミロプラストは存在せず、重力感知は行わないでしょうか。問題集の解答は「根冠を除去したとうもろこしの幼葉鞘を水平に置いた場合の根は屈曲しない」と言うことでした。

Makohama 様

植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。

問題集の回答にあるように、根冠を除去したトウモロコシの芽生えを水平におくと、根は生長を続けますが、重力屈性を示しません。根冠の中央部分にはコルメラという細胞群があります。コルメラ細胞をレーザー光線で破壊しますと、根冠を除去した場合と同様に、伸長生長はしますが重力屈性が認められなくなります。コルメラ細胞には複数のデンプン粒を含む細胞小器官(デンプン体:アミロプラスト)があります。このアミロプラストは通常の細胞にあるアミロプラストに比べ、直径が10倍以上もあります。この特殊化したアミロプラストは地上部の器官(茎や胚軸)の内皮細胞に見られます(根の内皮には見られません)。アミロプラストは細胞質(サイトゾル)に比べ十分高い密度を持っていますので、比較的短い時間で沈降し、重力を感知するのにはたらいていると考えられています。この説は、アミロプラストの発達と重力屈性の強さに相関関係がある、重力刺激から反応までの時間の温度による変化とアミロプラストの沈降時間の変化に相関関係がある、デンプン合成が欠如した変異体では重力屈性がみられないなどの実験結果で支持されています。多くの植物で大きなアミロプラストが重力センサーとしてはたらいていることが確認されていますが、中にはシャジクモの仮根のように、硫酸バリウムの結晶が重力センサーである場合もあります。また。ある種の西洋ランの気根のように重力屈性は示しますが、大きなアミロプラストが認められないという例も報告されています。
庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-11-20
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