一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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表皮を剥ぐと気孔が閉じてしまうのはなぜですか?

質問者:   中学生   とき
登録番号5256   登録日:2021-10-21
いつもお世話になっております。
気孔が開いている時間と、日の出日の入りの関係を調べたく思い、夜明け前からツユクサの表皮を剥ぐ方法で気孔の観察をしました。
結果、いつも気孔は閉じられており 調べたところ このサイトで表皮を剥ぐ方法では、気孔が閉じてしまうことを知りました。
レプリカ法を用いて調べなおそうと思っておりますが、なぜ表皮を剥ぐと気孔は閉じてしまうのでしょうか?
とき 君

この質問コーナーを度々ご利用いただきありがとうございます。日の出入りに際して気孔の開閉状態がどのように変化するかを自分の目で確かめようとされているのですね。自分で確かめてみることはどのような場合にも重要な姿勢だと思います。

ご存知のように、気孔の開閉は表皮に存在する孔辺(こうへん)細胞と呼ばれる一対の特別な細胞の変形によって生じます。この細胞の形の変化は外囲環境の二酸化炭素の濃度や水蒸気の濃度(湿度)に敏感で、例えば水蒸気の濃度が高い時には気孔の孔(細胞間のすき間)が開き、低い時には孔が閉じるように細胞の形が変化することが良く知られています。孔辺細胞のこのような構造変化の特性は、乾燥条件下において植物体が水分を失うのを抑えることに役立っているものと理解されています。

ご質問の点ですが、葉の組織から剥ぎ取られた表皮のシーツは直ぐに乾燥すると思われるので、剥離シーツの中の孔辺細胞は水蒸気濃度が低い状態に置かれた葉っぱの中の細胞の場合と同じように、もともとの開閉状態とは無関係に膨らみが減らされる結果として、気孔の孔が閉じた状態で観察されることになるものと思われます。なお、気孔開閉の仕組みの詳細については、本質問コーナーに数多くのQ&Aがあり(例えば、検索キーワード「気孔の開閉」)、また、「みんなの広場」の解説・エッセイ欄に木下俊則先生の「気孔の働きと開閉の仕組み」と題する解説が掲載されていますので、それらの方を参考にしてださい。

今後の実験でレプリカ法を用いて調べなおそうと思っておられるとのことですが、登録番号1492のQ&A(1492" shorten="1" >https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=1492)には気孔の開閉を観察する方法が記載されていますので、参考にしてください。レプリカ法でもやり方によっては気孔が閉じてしまう心配があるので注意してください。要は、孔辺細胞に構造変化を起こさせないように素早く精密なレプリカを作ることが重要な点だと思います。例えば、幾分複雑になりますが、まずは(歯医者さんが歯形とりに利用する)シリコンゴムや寒天などのような材料で素早く第一次のレプリカを作成し、第一次レプリカから観察しやすい第二次のレプリカを作るのも一つのやり方かと思います。環境の変化に応答する気孔開閉のスピードがわかると面白いですね。
佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2021-11-10
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