一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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挿し穂のキャビテーション

質問者:   自営業   植木屋
登録番号5344   登録日:2022-03-07
葉が付いた状態で挿し木を行っても、なぜキャビテーションが起きないのか?
水挿しの場合、水柱が切れないのでキャビテーションが起きないこともわかります。しかし、土壌に挿した場合は気相が関係してキャビテーションが起きそうに思えます。

職業上挿し木をすることがありますが、発根までの期間、どのように土壌中の水が動いて挿し穂の葉から蒸散されているのか、不思議でありません。
以前から気になり色々調べてみましたが、関連資料すら見つけられませんでした。
ここでならお答え頂けるのではないかと思い、質問させて頂きました。

植木屋さん

みんなのひろば「植物Q&A」へようこそ。質問を歓迎します。

切り花を長持ちさせるには「水揚げ」が大切であり、植物によっては、茎に気泡ができることを防ぐために、水切りといって、切り花の茎を水を張ったバケツにつけたままで、水中で切ることが推奨される場合もあります。
しかし、挿し木の場合はこの方法は使えないので、質問者の疑問はもっともです。
文献を調べてみると「ゲッケイジュ属(Laurus)」について、挿し木の際に導管に気泡が入ることにより「木部閉塞」が起こるが、植物はどのようにして枯れ死から免れているかに関する研究報告が出ていました。これによると、指し穂を作る際に導管内に気泡ができることは避けられない。しかし、周辺の細胞は、気泡ができた木部にオーキシンを輸送し、その結果、周辺の細胞から木部に水分の移動が起こるので、次第に気泡が水分に吸収されて行き、茎の水の移動が回復するというものです。その後、切り口から発根が起こり、挿し木が根付くことになります。
他の属の植物でも同様なことが起こるか証明はされていないものの、上記の考えはいかにも納得できるものです。
櫻井 英博(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-04-06
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