一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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植物の開花と出芽時期について

質問者:   一般   河童
登録番号5368   登録日:2022-04-27
我が家の庭には、梅、杏、スモモ、プルーン等の果樹がありますが、どの樹も花が先に咲き、その後芽が出てきます。
果樹では無いモクレンやコブシなども先に花が咲きます。
このようなことは、長い歴史を経て植物のDNAにすり込まれているのでしょうが、花が先に咲くことは植物にどのような
利点があるのでしょうか。
河童様

こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「植物の開花と出芽時期について」に、『植物の形には意味がある』の著者としても知られる早稲田大学教授の園池公毅先生に回答していただきました。

【園池先生の回答】
ここでお知りになりたいのは葉を出すよりも先に花を咲かせる「利点」であって、メカニズムではないのだと思います。メカニズムは実験で確かめることができる場合が多いのに対して、このような場合の「利点」は、いろいろ考えてみることはできる一方で、それが本当かどうかを確かめるのはなかなか困難です。従って、お答えできるのは、可能性として考えられる様々な利点の、それもごく一部です。
まず、花を咲かせるタイミングと葉を出すタイミングが、別々に決まっている場合について考えてみます。花を咲かせる意味は、昆虫などによる受粉にありますから、その時期を決める大きな要因は昆虫の活動です。葉を出すのは、葉が十分に光合成をできる環境になった時でしょう。春の環境に限って言えば、昆虫の活動も、光合成も、温度によって大きく左右されそうです。もし、ある植物の受粉を媒介する昆虫の活動温度が、その植物が十分に光合成をできるようになる温度よりも低ければ、春に温度が上昇するにつれて、先に花を咲かせ、あとから葉を出すのが合理的です。他方、光の強さや昼の長さも季節によって変わっていきますから、それらについても、昆虫の活動と植物の光合成への影響を考えてみて、原因となるかどうかを推測することができるでしょう。
もう一つの考え方は、花を咲かせるタイミングが、何らかの形で葉を出すタイミングに影響されているという考え方です。この場合、たとえば、葉が茂る前に花を咲かせた方が、花を昆虫に見つけられやすくなるので、花を先に咲かせる、といったことが考えられます。
考えられる利点は、これだけでなく、たとえば果実が成熟するタイミングを何かに合わせると都合がよい、ということだってあり得るでしょう。あまり回答にはなっていないかもしれませんが、「正解」にとらわれることなく、このように自分でいろいろと考えてみるのが植物の楽しみ方の一つなのではないかと思います。
園池 公毅(早稲田大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
竹能 清俊
回答日:2022-05-10
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