一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ひまわりの発芽について

質問者:   小学生   あい
登録番号5424   登録日:2022-08-09
夏休みの自由研究でひまわりの発芽を観察しています。
しましまの殻付きの種と、殻をとった白い種を分けて土に入れ、発芽するか観察しました。
全部発芽しましたが、2回とも、しましまの殻付きの方が早く芽を出しました。

2回目は、病気にならないための紫の薬をつけた種も一緒に蒔きましたが、やっぱり一番早く芽を出したのは、しましまの殻付きでした。

硬い殻がない方が早く芽を出しそうなのに、なぜしましまの殻付きの方が早く芽を出すのですか?

教えてください。
あい様

こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「ひまわりの発芽について」にお答えします。

 ヒマワリの「たね」と呼んでいる黒と白のしま模様のものは本当は果実で、しま模様の硬い殻は果実の皮(果皮)です。この果皮を取り除くと中から白い本当の種子が出てきます。あなたが観察した「しましまの殻付きの種」は果実のことで、「殻をとった白い種」は種子のことでしょう。果皮のついたままの種子と、果皮を取り除いた種子をまいて、発芽するかどうかを調べたのだろうと思います。
 
 植物の種子にはすぐには発芽しないような仕組みがあることが多いです。種子のまわりに硬い果皮があれば、それが邪魔をして発芽が遅くなりそうです。また、果皮には発芽を抑制する物質が含まれていて、これが種子の発芽を遅らせることもあります。ですから、果皮を取り除けば発芽が早まることが多いです。ヒマワリの場合もそのとおりです(本質問コーナーの登録番号1740, 4388を見てください)。ところが、あなたの観察では、果皮を取り除いたら(殻をとった白い種にしたら)発芽が遅れたとのことです。果皮があることが、むしろ、発芽を早めたわけです。あまり聞かない話なので、説明が難しいです。ひとつの可能性として考えられるのは光の影響です。
 
 種子の発芽には光が必要だったり、逆に光が無い方が発芽しやすかったりします。ヒマワリの種子は、光が無い方が発芽しやすい暗発芽種子(本質問コーナーの登録番号0847, 2895などを見てください)です。ヒマワリの果皮は黒く、厚いので光を通しにくいでしょうから、果皮つきのまま光があたっても、中にある種子にまで光は届きにくいはずです。果皮を取り除けば、種子には直接光があたります。ですから、暗発芽種子ならば、果皮つきの方が早く発芽するでしょう。あなたの観察では、果皮を取り除いた種子も土に埋めていますが、種子にかぶせた土の厚さでは光は完全にはさえぎられず、少しの光が果皮を取り除いた種子にあたって発芽を遅らせたのでしょう。これで、果皮つきの方が早く発芽したことが説明できます。
 
 この説明が正しいかどうかを確かめるには、いくつかの実験が必要ですが、最初にヒマワリが暗発芽種子かどうかを調べるといいでしょう。実験は、問題を複雑にしている果皮と土の無い条件でやるといいです。例えば、二つのシャーレに脱脂綿かキッチンペーパーのようなものをしいて水を加え、果皮を取り除いた種子を置きます。一つのシャーレはアルミホイルで包んで光が入らないようにし、もう一つはそのままにして種子に光があたるようにします。こうして、発芽するかどうかをみてみましょう。アルミホイルで包んだ方が早く発芽すれば仮説どおりです。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-08-15
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