一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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皇帝ダリヤの樹形

質問者:   その他   hiro
登録番号5430   登録日:2022-08-17
 皇帝ダリヤの枝は全体的にほぼ上が平な円錐状となっているように見えます。他の多くの草木はその枝は空に向かって競うように長さが一定値内でばらばらですが、不思議なことに、皇帝ダリヤは逆円錐状に枝の長さがほぼ揃っていて平らです。このような姿勢はどうして起こっているのでしょうか。
hiro 様

この質問コーナーをご利用いただきありがとうございます。

植物を形づくる要因は、(A)葉を分散して配置することにより効率よく光エネルギーが集められること、(B)受粉や種子の散布が効率よく行われること、(C)物理的な強度が保たれ水分や養分の輸送経路がコンパクトに確保できることなどの機能に関連づけて考えることができます。一般論としては、これら生理機能のバランスの結果として安定な植物体が形成され、樹(草)形などの形態となって表現されると言うことができます。

植物体の地上部の形成過程においては、小さな胚軸や子葉の組織から細胞分裂の仕組みによって大規模な枝葉が展開して行くことになりますが、この発生の仕組みそのものが樹(草)形を基礎づけ、更には、体の部位による展開速度の差(例えば、幹と枝の成長速度の違い)が全体としての形態に大きな影響を与えることになります。植物の成長過程においてしばしば顕著に認められる出来ごとは、茎の先端にある頂芽の成長が腋芽(側芽)の成長よりも優先される「頂芽優勢」と呼ばれる現象です。この現象はホルモンによる制御の結果として現れることが知られていますが、頂芽が優先される程度には植物の種類や生理状況よって大きな差があり、これが樹(草)形の違いを生む大きな要因となっているものと思われます。

皇帝ダリアの場合、頂芽優勢の程度が弱いために枝が大きく展開して逆円錐状の樹(草)になるものと理解することができます。私は近所の家の庭先で開花しているのを眺めるぐらいの経験しかありませんが、機会があれば成長の過程を観察されることをお勧めします。

なお、上にも述べましたが、樹(草)形は成長の段階によって変化することがあり、また、植物(仲間を含む)間の相互作用を含めた生育環境によっても大きく変わる場合もあります。
佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-08-21
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