一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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オクラの小さい粒について

質問者:   会社員   faizu_papa
登録番号5456   登録日:2022-09-05
オクラを開いた中にタネ以外の小さい茶色の粒がありました。これは何か分かりましたら教えてください。
faizu_papa 様

ご質問、有り難うございました。植物の生殖・育種・遺伝を専門に研究されています東北大学の渡辺正夫教授から、下記の回答が寄せられました。

【渡辺先生の回答】
東北大学大学院生命科学研究科で、植物の生殖、特に、自家不和合性という「花粉と雌しべの相互作用」を研究している渡辺と申します。果実の形成も生殖過程の重要な要素ですので、質問内容について説明したいと思います。

 食することができるレベルに生長した「オクラ」の中に観察された「茶色の粒」が何かということですが、このような症状が起きる可能性をいくつか考えて見ました。
考えられるのは、(1) 病斑(植物に感染できる病気の感染のあと)、(2) 害虫による食害、(3) 果実形成過程において、果実内での発達異常による褐変化、が可能性として考えられます。オクラに感染する主要病害を調べてみましたが、多くの場合、葉への感染で果実内への感染で小さな病斑になることは考えにくいと思います。また、食害を及ぼす害虫の場合、オクラの果実の部分にも食害があってもよいはずですし、食害の大きさが均一というのも不自然です。

 残されたのは果実が発達する段階での発育異常です。今年は6月末全国的に35℃を超えるような気温で梅雨が明けました(実際は7月末であったということを、後日修正)が、7・8月と不安定な天候が続きました。東北大がある仙台でも雨が多く、日照不足、気温も低めに推移しました。そんな環境条件ですので、栽培している作物で花粉の飛散が十分に起こらず、果実が形成できず、落花(落果)したようのものも多く観察されました。これは花粉が雌しべに受粉できず、受精に至らないことが原因です。
一方で、少ない数の花粉で受粉・受精ができた場合、部分的に種子が形成され、果実もある程度生育することができます。

 送って頂いた写真を拝見しましたら、市販のオクラであれば、果実の中にいっぱいの「種子」が観察されますが、2枚の写真では十分数の種子が形成されてないように見えます。では、この茶色の粒が何かということですが、今年の雨が多いような夏らしくない環境条件下で十分に花粉が雌しべに届かず、未受精の卵細胞が発育停止してしまい、その後、茶色く褐変化したのではないかと推測しました。





渡辺 正夫(東北大学大学院生命科学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
山谷 知行
回答日:2022-09-07
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