一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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維管束の数と枝分かれの仕方

質問者:   教員   陽
登録番号5471   登録日:2022-09-15
茎の中を通る維管束が枝分かれして、葉の葉脈を形成するため、葉では上側に道管下側に師管が配置されるという認識です。
そう考えると維管束の本数と葉の枚数に関係性があるのでしょうか?もし道管が枝分かれしているならば、葉の高さによって水の吸い上げる量に影響すると思いました。
成長するたびに維管束が増える葉が形成されるのか?それとも維管束が枝分かれして葉が形成されるのか?この疑問について教えてください。
陽 様

この質問コーナーをご利用いただきありがとうございます。

維管束の本数と葉の枚数との関係に着目されている点に興味を感じました。茎の中を通る維管束の数は植物の種類によって1本の場合から数千本を超える場合まであるようですが、茎の中の維管束の一本一本が個別にそれぞれの葉に対応しているのではなく、維管束が枝分かれして最終的に葉脈維管束として葉を構成しているものと理解されています。

葉が水を吸い上げるに際して中心となる力は、気孔から蒸散する水蒸気と平衡関係を保とうとする水分子の凝集力に由来しています。水の蒸散は気孔の開閉によって大きく左右され、葉の高さに関係なく、蒸散速度が大きい葉につながる維管束を通る流れが吸い上げる水の流れの主経路になるものと思われます。

道管・篩管ともに「管」と呼ばれますが、それぞれは養分や水分の通路として特化した細長い細胞を中心に作られる連続性の複合組織(細胞の集合体)で、管の分岐はその細胞連続体の枝分かれです。植物の芽の先端を拡大鏡で観察すると、周りの葉っぱなどに隠れて緑色の少ない微細な幼葉が見えますが、この状態でも葉脈のような構造がくっきりと見られます。葉が分化する頂端分裂組織(生長点)の部分においては、既存の組織に導かれる形で遺伝的に決められた種固有の維管束の基が作られ、これが葉の展開や環境条件の変化に伴って発達して行くものと思われます。

ご満足いただける回答になっていない場合には改めて質問をお寄せください(より詳しい研究者からの回答文を用意します)。
なお、本質問コーナーには維管束に関する多くのQ&Aが掲載されておりますので、そちらの方もご参照ください。
佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-09-19
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