一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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土壌間隙中の気体はどのように交換されるか

質問者:   一般   カミヤマ
登録番号5514   登録日:2022-11-23
私は趣味で野菜・果物のプランター栽培をしています。特に大玉トマトとイチジクを育てています。

病虫害を減らし、また収量を増やすためには、まずは根群が健全に発達していること(根長、本数など)が必要だろうと考え、これに適した土壌の特徴について調べていました。

トマトとイチジクは、ともに酸欠に弱い植物だとよく言われます。

ここで気になったのが、土壌間隙中の気体は、土壌呼吸によって二酸化炭素濃度が高まりますが、その後どのようにして失った分の酸素が供給されるのかです。

「雨水によって気体が押し出され、新しい気体が供給される」という説明を聞いたことがありますが、それでは雨の少ない土地では気体が交換できないとも思えます。

実際のところどのようにして酸素は供給されるのでしょうか。ご教示いただきたく存じます。
カミヤマ 様

ご質問、有り難うございました。土壌学・土壌物理学をご専門にされています農研機構東北農業研究センターの高橋智紀博士と、秋田県立大学の高橋正先生から、下記の回答が寄せられました。

【高橋智紀先生と高橋正先生の回答】
土壌への酸素の流入は「通気」と「拡散」という2つのメカニズムで行われます。通気は圧力差によって空気が土壌に入っていく現象です。例えば、ご質問での例のように雨が降ると雨で土壌の間隙(隙間)が満たされ、排水されるときには圧力が下がります。この時圧力差によって地上の空気が土壌中に入っていきます。これが通気です。

一方、拡散は空気中の酸素濃度に差がある場合、酸素濃度が同じになるように酸素分子が移動する現象です。これは通気と違って圧力の差が無くても起こります。例えば、植物の根が呼吸をすると土壌中の酸素が消費され、二酸化炭素が増えます。すると地上との間に酸素濃度や二酸化炭素の濃度の差が生まれ、これを平らにするように酸素が土壌中に拡散し、二酸化炭素が地上へと拡散します。拡散が生じれば雨がなくとも酸素は土壌に流入するわけです。

通気と拡散とどちらが主な酸素の流入メカニズムなのでしょうか。これは天候や土壌中の呼吸量などに依存するのでケースバイケースです。しかし、一般的な農地の場合、多くの事例研究から、土壌への酸素の流入のほとんどは拡散によるものだ、と考えられています。拡散速度を決めるガス拡散係数は土壌の気相率にほぼ比例します。
ですから、作物の根が酸欠を起こさないためには土壌の気相率を増やす必要があります。一方で水も生育に不可欠な成分ですので、土壌に応じバランスの良い液相と気相の割合を保つことが必要です。
高橋 智紀/高橋 正(農研機構東北農業研究センター/秋田県立大学生物資源科学部)
JSPPサイエンスアドバイザー
山谷 知行
回答日:2022-11-28
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