一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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花梨が何故大きな実をつけるのか?

質問者:   一般   興味溢れる老人
登録番号5518   登録日:2022-11-29
実をならせる植物の場合には、その実を動物に食べてもらい、消化されない種を遠方まで運んでもらって、そこで排出してもらう事により種族を広い範囲で増やす事が本来の目的と聞いています。
しかし花梨の場合には、実は非常に硬くかつ繊維質で、鳥等が食べている様子は無いのです。
自然界では、花梨の実を好んで食べる動物が居るのでしょうか。
もし居ないとしたら、花梨の実は何故そのように大きくなるのでしょうか。
興味溢れる老人様

Q&Aコーナーヘようこそ。歓迎いたします。私も老人ですが、「興味溢れる」生き方は大賛成です。
「カリンの果実は何故大きいか」というタイトルは漠然としていますが、ご質問の内容から「硬い果肉の大型の果実の種子はどうやって頒布されるのか」という意味だと理解して回答します。
ただし、カリンの種子頒布について特に研究はなされていないようですので、ここでは一般的な観点からの推察を述べます。

カリンの果実は確かに硬いですが、完熟すると芳香を放ち、果肉も甘酸っぱくなりますので動物を誘う果実としての条件は備えていますが、小動物が自分の巣などへ持ち運ぶには確かに大きすぎます。大きな動物だったら可能でしょう。仮に大型の動物が持ち運んでくれたとして、そこで硬い果肉を噛み砕いて食べるかどうかはわかりませんが、種子は親樹から離れたところに運ばれたことになります。
カリンの種子は他の多くの樹木の種子と同じようにすぐ発芽はできません。発芽には一定期間の低温経験が必要な「低温要求性種子」だからです。「低温要求性種子」については本コーナーでこれまでにたくさん関連質問を扱っていますので調べて下さい。低温要求性種子、低温処理、種子発芽などの用語で検索して下さい。
カリンの種子の発芽には3ヶ月程度の低温処理が必要です。人工的に発芽させるには冷蔵庫に入れておくのが良いでしょう。
運ばれたカリンの果実は、動物が食べてしまえば、種子は糞に混じってあちこちに撒き散らされるでしょうし、食べられなければその場所に残ってそのまま冬を越し、その間に果肉はおそらく微生物などの働きで軟化するでしょう。いずれにしろ気温の上昇とともに種子は発芽します。
なお、大型の動物と書きましたが、特定されているわけではありません。私達が日常生活で目にできるカリンは栽培ものですから、カリンが野生している環境で生息する動物のことを考えなければなりません。カリンはもともと中国産の植物です。進化してきた生育環境の中で、そのような果実をならせて種子頒布を図る方策がカリンという植物にとって適当であったのでしょう。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2022-11-30
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