一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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エアプランツはどこから水を吸い込み蒸散しているのか

質問者:   会社員   H帝
登録番号5606   登録日:2023-04-12
エアプランツはどの部分から水を吸い上げてどの部分からどの様に蒸散しているのですか?
主に夜間気功を開いて水を取り入れるのと同時に蒸散もしているはずですが、エアプランツは根がありません。
通常の植物は浸透圧で水を取り入れ圧力や蒸散によって上へ運ばれるらしいですが、エアプランツの場合も同じなのか分かりません。
H帝様

こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「エアプランツはどこから水を吸い込み蒸散しているのか」にお答えします。

 通常の植物は根から水を取り入れ、葉から水を吸収することはありません。葉は表皮細胞の外面がクチクラで覆われていて、この層は水分を通さないのが普通だからです。しかし、水中または水面で生活する水生植物は葉の表皮細胞からも水を吸収し、クチクラ層が発達していないコケ植物は葉表面から水分を吸収します。根の無いエアプランツも葉面から水分を吸収します(登録番号2660, 3507, 4551をご覧ください)。根が無いのですから、通常の植物のように根から吸収した水分を根圧によって上へ運ぶという仕組みはありません。 
 エアプランツとはパイナップル科のTillandsiaに属する植物の総称で、その生息地は砂漠地域と熱帯雨林地域の両極端の環境条件の場所であり、形態的には根が無いか、または、他の植物や岩などに着生する根があるだけです。水や養分を吸収するのは根ではなく、葉から霧や空気中の水分や養分を吸収しています。具体的には、葉の表面にある毛(トライコーム)から吸収しています。トライコーム(トリコームとも)はエアプランツに限らず、多くの植物の葉や茎の表面にある細かい毛で、様々な形状や役割があります(登録番号2383, 4087, 4116など)。エアプランツではトライコームが水分を吸収する役割を担っています。
 沙漠などの乾燥地では霧が発生したときの植物体の表面への結露からの吸水が量的に非常に重要で、トライコームと葉の表面の隙間に溶質濃度の高い(水の濃度の低い)液が分泌され、これで結露を促すとのことです(登録番号3507)。この分泌液はトライコームからのもので、浸透圧の差で空気中の水分を取り込むわけです。結露した水の取込みについては詳しい研究があり(Ohrui他  Planta. 2007; 227(1):47-56.)、まず物理的吸水(登録番号2630, 5569)によってトライコームの中に取り込まれ、次いでアクアポリン(登録番号5048)の働きを介して葉の組織に送られるとのことです。
 砂漠に生息するエアプランツにはトライコームが多く、熱帯雨林に生息するものではトライコームは少ないようです。トライコームによる水分吸収の研究は砂漠のエアプランツを対象としたものが多いように思いますが、トライコームの少ない熱帯雨林のエアプランツには異なる機構があるかもしれません。
 蒸散については、エアプランツも気孔を持っているので通常の植物と同様に気孔を介して行っているものと思います。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2023-04-27
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