一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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花成物質「フロリゲン」

質問者:   その他   加藤 祐太郎
登録番号0562   登録日:2006-03-18
光周性を感知した葉で花芽形成を促進する物質「フロリゲン」が生成され、これが師管を通って頂芽や側芽に移動し、花芽を形成すると考えられている。
しかし、フロリゲンの実体はまだ良く分かっていない。
ということを知ったのですが、現在でもまだフロリゲンについてよくわかっていないのですか。
フロリゲンは液体ですか?フロリゲンだけ抽出するのは、難しいですか。
高校生位でも、これを実験などで調べることもできますか?
もし、できそうならヒントなどを教えて下さい。
加藤 祐太郎 さん:

遅くなりましたが、登録番号0562の回答をお送りします。
フロリゲン研究の最先端の研究を展開しておられる京都大学の荒木 崇先生に伺いました。荒木先生もあげておられますが滝本 敦先生の中公新書は参考になると思います。


加藤祐太郎 様

ご質問ありがとうございます。お返事が大変に遅くなってごめんなさい。

お尋ねのフロリゲンの実体解明に関しては、実は昨年の夏に非常に大きな進展がありました。8月半ばから9月半ばにかけて。京都大学の私の研究室、ドイツのマックスプランク発生生物学研究所のデトレフ・ヴァイゲル教授の研究室、そしてスウェーデンのウメオ農業大学のウーヴェ・ニルソン教授の 研究室が相次いで、シロイヌナズナというアブラナ科の植物のFT と呼ばれる遺伝子によってつくられるタンパク質あるいはメッセンジャーRNAがフロリゲンの正体と考えられるという論文を発表しました(遺伝子、メッセンジャーRNA、タンパク質については、生物の教科書や参考書を見てください)。詳しい点についてはまだ解明が不十分ではあるものの、多くの研究者はこれが正しいだろうと考え始めています。

私の研究室の発表内容については、以下の2つのサイトにほぼ同 じ内容の一般向けの紹介記事を載せています。じっくり読んでみてください。

科学技術振興機構のHP
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20050812/index.html

京都大学のニュースリリースのHP
http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_news/news.htm#n050812
(このサイトの画面右上の2005年8月のところクリックし、 8月12日付けのニュースを探してください)

さて、FT遺伝子は、シロイヌナズナ(長日植物)のほかにも、イネ(短日植物)、アサガオ(短日植物)、オオムギ(長日植物)、ドクムギ(長日植物)、トマト(中性植物)、ポプラ(短日植物・樹木)、 柑橘類(樹木)などでも花芽形成を促す働きがあることがわかっていま す。私を含めて多くのひとがさまざまな植物でフロリゲンとしての働きをしていることを期待しています。

植物からフロリゲンだけを抽出することは、私たちにとっても極めて難しいです。というよりも、誰も成功していません。
フロリゲンの働きや動きを調べるさまざまな実験については、瀧本 敦(たきもと あつし)先生(京都大学名誉教授)の『花を咲かせるものはなにか』(中公新書)を読んでみてください。謎解きのためのさまざまな工夫に感心すると思います。アサガオなどを使ってご自分でも実験してみたくなるかもしれ
ません。

荒木 崇(京都大学大学院理学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2006-04-18
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