一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ソメイヨシノの不稔性

質問者:   その他   つつつん
登録番号0577   登録日:2006-04-11
ソメイヨシノは不稔性で有名です。
ですが親となるオオシマザクラとエドヒガンは実生での繁殖が可能だそうですね。
いろいろと探ってみたもののソメイヨシノは園芸品種の為としか書かれておらず、困り果ててここにたどり着きました。

ソメイヨシノの不稔性たる由縁を是非教えてください。

 
つつつん さん:

登録番号0577の回答をサクラ研究の専門家 森林総合研究所の勝木俊雄先生に伺ったところ以下のような解説を頂きました。見かけだけで種子を作らないから「不稔」と思ってしまうのはたいへんな間違いですね。科学研究の大切さを生徒達に強調していただければと願っています。


質問にあるように、'染井吉野'はあまり果実(さくらんぼ)が見られないことから、不稔だと思われている人が多いようです。しかし、'染井吉野'もよく調べてみると、ちゃんと果実をつくりますし、その中にある種子は発芽して生育します。なぜ、上記のような誤解が生じたのでしょうか。大きくわけてふたつ考えられます。ひとつは一般に'染井吉野'は接木で増殖するからです。というのも'染井吉野'とは個体レベルで違いを認識するような栽培品種であるため、'染井吉野'の種子を増殖しても'染井吉野'とまったく同じ形質をもつ子どもが出来ないからです。そして、こうして種子で増殖された子どもは'染井吉野'とは呼べません。人間でも親と子どもは似ているけれども、顔や体つきが違うのと同じことです。このように接木でのみ増殖され、種子で増殖されないことから、生殖能力がないと誤解されているようです。

また、ふたつめに自家不和合性の影響があります。サクラ類は一般に他家受粉でのみ受粉し、自分と同じ遺伝子をもつ花粉は受粉できません。したがって町中の公園などで'染井吉野'だけを植栽しているような環境では、自分と異なる遺伝子の花粉がありませんから受粉できずに種子をつくることはありません。こうした現象から'染井吉野'は不稔だと思われる人がいるようです。しかし周囲に交配が可能なオオシマザクラやヤマザクラなどがある環境では'染井吉野'もふつうに種子をつくっています。

勝木 俊雄(森林総合研究所森林植生研究領域群落動態研究室)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2006-04-17
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