一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ランやツツジの種子数と付いた花粉数

質問者:   会社員   ktam
登録番号6022   登録日:2024-09-20
質問4307や4710で、花の受精には種子の数に相当する花粉の数が必要と知りました。
そうすると同様に、1つの花に数万個の種子を作るというランやツツジでは、数万個の花粉が付着するということでしょうか?
質問(登録番号5329)では「シロイヌナズナの柱頭には数百の花粉が受粉可能」とありますが、ランやツツジで数万が受粉可能な面積があるようにも思えません。

いくら花粉が小さいといってもたくさん準備するのはエネルギーが必要ですし、虫に数多く運んでもらうのも不合理に思えます。
一つの花粉から複数の種子を受精させることができたりしていないでしょうか?
ktam様

こんにちは。日本植物生理学会の植物Q&Aコーナーに寄せられたあなたのご質問「ランやツツジの種子数と付いた花粉数」にお答えします。
すでに本Q&Aコーナーの登録番号4307, 4710をご覧になった通り、一つの花粉と一つの卵細胞が受精して一つの種子を形成しますので、一つの花に数万個の種子を作る植物では数万個の花粉が付着するということになります。
数万個の花粉が必要ということを考えると、受粉可能な柱頭面積、花粉を準備するエネルギー、昆虫に運んでもらうことなどについて疑問が生じるのは当然のことと思います。しかし、一つの花粉が複数の種子を形成することはできないのですから、数万個の花粉で受粉できる仕組みが整っているはずです。
 多くの植物種では、葯から放出された花粉粒がポリネーターや風によって他の花に運ばれますが、ランの仲間では特異な仕組みがあります。ランでは大量の花粉がぎっしり集まって花粉塊となっており、訪花した昆虫の体に花粉塊ごと付着し、この昆虫が他の花を訪問したとき花粉塊はその花の柱頭にトラップされて大量の花粉が一度に運ばれます。こうして子房の中のたくさんの胚珠が受精でき、たくさんの種子が形成されます。ツツジの場合は、1果当たりの種子数はランほど多いわけではありませんし、花の構造も一般的な植物と同じですから、受粉、種子形成の仕組みも同じだと思います。
一つの花粉から発芽した花粉管は一つの胚珠に向かって伸び、その珠孔から中に侵入して精細胞を放出して卵細胞と融合しますから、複数の胚珠を受精させる余地はありません。一つの花粉で複数の種子を作ることはできない所以です。
竹能 清俊(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2024-10-27