一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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カルシウムとエチレン

質問者:   会社員   ちくわ
登録番号0728   登録日:2006-06-02
毎回丁寧な回答を頂き、ありがとうございます。仕事の関係で、本来は専門外である植物に関して独学中のため、この様な場の存在は非常に心強いです。 

今回は、カルシウムとエチレンの関わりについて質問します。
カルシウムのエチレン生成抑制への関与を示唆する実験結果が存在していることを、ある書物で知りました。
確認のため、他の本などでカルシウムやエチレンについて調べたのですが、この両者を結びつけるような記述を見出すことはできませんでした。
確認として選んだ調べ方が悪かったのか、本当はカルシウムとエチレンは関係ないのか。この二者の関係をどの様に捉えて良いのか、行き詰ってしまいました。
もし関係があるとしたら、カルシウムのセカンドメッセンジャーとしての働きがなんらかの形で作用しているのでは、と推測していますが、実際はどうなのでしょうか? 

よろしく、お願いします。
ちくわ さん:

登録番号0728についてお答えいたします。
カルシウムとエチレン生成に関する研究は20年から30年前になされ2つの異なった結果が報告されています。1つはリンゴのエチレン生成に対して外から10mM程度のカルシウム(塩化カルシウム)を与えるとエチレン生成が抑制されるとする報告で、その理由については生体膜の流動性がカルシウムによって抑制されるためとしています。2つ目は、マメの芽生えを使った実験で、マメの茎にサイトカイニンという植物ホルモンや塩化カルシウム単独で与えるとどちらの場合もわずかにエチレン生成が促進されますが、サイトカイニンとカルシウムを共存させるとエチレン生成の促進が大きくなるという報告です。この場合も生体膜に対するカルシウムの安定化効果だとしています。これらの報告はエチレン生合成の仕組みが分かっていなかった時代の研究で、それがはっきりしている現在はカルシウムが直接エチレンの生合成系に働いている証拠は何もありません。しかし、植物細胞内でも細胞質カルシウム濃度は極めて厳密に調節されており、その濃度変化が細胞の働きの内部信号となっていますので、間接的な影響は否定できません。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2006-06-12
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