一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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植物への食塩水の投与

質問者:   その他   みい
登録番号0894   登録日:2006-07-13
学校のほうで、植物への様々な刺激の反応性を班毎テーマを決めて実験・観察することになりました。
そこで私たちの班では、きゅうりに食塩水を与えることになったので、前もって食塩水について調べていました。
その中で、食塩水すなわち塩化ナトリウムからのナトリウムイオンが植物にとっては毒性を示すことがわかりましたが、なぜ毒性を持つのかが分かりませんでした。
なので、なぜ毒性を持つかを教えてください。お願いします。
みい さん

 ヒトではナトリウムがカリウムと共に必要ですが、植物は動物に比べカリウムを多量に含み、無機養分として窒素に次いで多量に含まれています。これに比べ、ナトリウムは植物の種類にもよりますが、カリウムに比べ非常に少量しか含まれていません。植物でカリウムは細胞の浸透圧を保持するために、また幾つかの酵素を活性化するためにも必要ですが、これは大部分の植物ではナトリウムで置き換えることはできません。これはこれらイオンが根から吸収され、地上部への移動、細胞内の細胞小器官などへの移動のために必要なイオン輸送がカリウムではうまく進行するけれども、ナトリウムでは進行しにくいためです。例えば、光合成のために葉の気孔から二酸化炭素を吸収し、蒸散作用をするには気孔を開かなければなりませんが、そのためにはカリウムを孔辺細胞に移動させなければなりません。これがナトリウムでは進行できないため、ナトリウムがたくさん吸収されてしまうと、気孔の開閉がうまく進行せず、見かけ上、毒性をもつように見えます。
塩化ナトリウムのうち塩素イオンは光合成のとき、水から酸素が発生するときに必要な元素ですが、C4 植物の一部の酵素にナトリウムが必要なものもあります。しかし、一般的に、キュウリもそうですが、塩化ナトリウムによって被害を受けやすく、これは塩害とよばれ、海岸の樹木、農作物など台風のときなど海水がかかって枯れるのがその一例です。塩と植物との関係についてはこれまで質問コーナーの登録番号0484, 登録番号0578, 登録番号0582の回答にもいろいろな面から議論されていますのでご覧下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2006-07-18
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