一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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野菜の色止めについて

質問者:   教員   木村
登録番号0933   登録日:2006-07-31
野菜をゆでるときに塩を入れてゆでたり、ゆであがったときに氷水に浸す、酢水に浸すなど、野菜の色を鮮やかにするために色止めをしますが、なぜこのようなことをすると、野菜の色が鮮やかになるのでしょう。
木村 さま

 料理の色止めのわざの科学的根拠についてのご質問ですが、これは生きた植物の生理を専門としている私たちにとっては難問です。しかも料理の対象となる植物の種類は多く、全てに成立する機構をお答えするのは難しいのですが、次のような機構ではないかと思います。しかし、私は調理科学を専門としているわけではありませんので、これらは実験によって証明することが必要です。

 まず、生きている植物細胞では、一般にその容積の大部分を液胞が占め、原形質に葉緑体、ミトコンドリア、細胞核など細胞活動に必要な多種類の細胞小器官が浮かんでいます。液胞には多くの加水分解酵素と共にフェノール類が含まれています。細胞が生きている状態で液胞の成分は、酸素がない、酵素と接触できないなどのためそのままですが、野菜をゆでるなどの加熱処理によって細胞の構造が壊れると、液胞の中のフェノール類などがオキシダーゼによって酸化重合し、“あく”(ポリフェノール)ができるようになります。リンゴの皮をむいて放置しておくと、白かった果肉の細胞が少しずつ褐色になりますが、これも、果肉細胞に傷がつきフェノール類が酸化されやすくなるためです。この褐変を防ぐためむいたリンゴを食塩水につけますが(これも色止め?)、これはNaClがフェノール類のオキシダーゼによる酸化反応を抑制するためです。従って、野菜をゆがく時に食塩を入れる(ゆがいている間およびその後のオキシダーゼ反応のNaClによる抑制)、ゆがいた後に氷水に浸す(低温にして重合反応を抑制)、酢水に浸す(一般に酸化重合反応はpHが高いと進行しやすいので、酢によってpHを低下させて抑制)のような色止めのわざは、褐色のポリフェノールの生成を抑え、緑などが鮮やかに見えるためではないでしょうか。

同じように美しい緑の色が保たれた状態でお茶を楽しめる緑茶、抹茶の製造加工法と、緑の色が消えてしまう紅茶の加工製造法との対比が、本質問コーナーの登録番号0740の回答にありますので、ご覧下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2006-09-09
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