一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ホテイアオイの有機物吸収作用について

質問者:   中学生   オレンジ
登録番号0938   登録日:2006-08-03
今、夏休みの自由研究でホテイアオイを使って汚れた川の水を浄化する実験を行っています。
そこで詳しく調べていることは、

①本当にその作用があるのか(ホテイアオイを入れる水と入れない水で比較)
②周りの気温の違いで変化はでるか
③日光を当てるのと当てないのでは違いはあるか
④生活廃水(とぎ汁と洗剤を入れた水)でも浄化できるか
⑤空気も浄化できるのか(ポトスと比較)という観点で調べています。

まだ始まったばかりで結果は出ていないのですが、気になることがあるので教えてください。

まず、ホテイアオイはどういうときに汚染物質を取り込んでいるのか
(蒸散や光合成、呼吸などが思いついたんですが…。それともドレということなくなんでしょうか。
そして、その取り込んだ物質はどうしているのか
(窒素固定して成長に使っているのですか?でも根粒菌は持っていないんですよね…。
それと、他の植物と比べて浄化作用が飛びぬけて大きいのはなぜか
(水草類は、どれも成長が早いので成長の早さだけが理由ではないのでは?と思いましたが、どうなんでしょうか。

最後に、この実験ではリンと窒素(アンモニウム)も計測しています。そこで気になったのは、キットではりんのなかに「リン酸」と「リン酸態りん」の2種類の比色表があったのですが、どっちを使うのがいいのでしょうか。
窒素も、古いものだからかもしれないんですが、「アンモニウム」と「アンモニウム態窒素」と2種類あり、わかりません。
たくさん聞いてしまって申し訳ありませんが、どうか教えてください。お願いします。
オレンジ さま

 ホテイアオイが河川の水を浄化できるかどうかの実験についてのご質問ですが、水の浄化を考える場合、植物(ホテイアオイ)が成長に必要とする成分(例えば、窒素、リン)を吸収させて水をきれいにする場合(これによって毒成分をもつアオコなどの生育を抑える)と、植物の生育には全く必要がなく、逆に生育を抑える成分を(無理に)ホテイアオイに吸収させて除去する場合とがあります。生活廃水のとぎ汁と洗剤を例にとれば、とぎ汁は米の種実のぬか層の成分ですから、そのまま、または、分解されて、最終的にすべて成育を促進させる成分としてホテイアオイに吸収されるでしょう。洗剤のうち、リン酸が入っているものであれば河川、湖沼ではリンが十分に含まれていないことが多いので、ホテイアオイの生育も促進するでしょう。しかし、植物にとって毒物になる界面活性剤や重金属イオンなどはホテイアオイの生育も抑えるでしょうが、生育が速ければ一部は植物体に取り込まれ環境から除去されるのに役立つ場合もあると思われます。
 上のように河川の汚染成分には少なくとも2種類あって、ホテイアオイに有効な成分は(教科書に載っているような)養分吸収の機構によって吸収、利用されていると思われます。ホテイアオイの生育が盛んなのは恐らく他の水草に比べ、この養分吸収の能力が高い(低い濃度の養分でも吸収できるなど)ためと考えられます。一方、ホテイアオイにとって有害な成分の場合、これは水と共に一部は吸収されるでしょうが、生育を抑えるはずです。これらは具体的にどのような成分であるかによってその吸収、作用が異なるため、それぞれについて実験を重ねなければならないでしょう。
 リン、アンモニウムの定量キット(これは環境水の分析用でしょうか?)のご質問については、その測定法がわからないのでお答えできません。例えば、植物細胞中でリンは無機リン酸、糖リン酸エステル、DNAなど多くの状態で含まれています。無機リン酸以外は酸で加水分解し、すべてのリンをリン酸にした後に測定するのが一般的な方法です。これは定量キットのメーカーにお尋ね下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2006-08-08
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