一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物体内の鉱物について

質問者:   その他   茶農家J_T
登録番号0986   登録日:2006-08-18
初めまして。中学生の時、植物体内で鉱物的物質が造られることを少し知りました。仕事柄、植物に対する関心・興味が高まり、詳しく知りたくなったので、質問させていただきました。

・植物体内で鉱物的物質が本当に生成されるのでしょうか?
・土壌中の鉱物が、根から吸収されることがあるのでしょうか?
・また、それは植物にとってどのような関係・効果があるのでしょうか?

いろいろ質問して申し訳ありません。お答えいただけると幸いです。
茶農家J_T さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用有り難うございます。ご質問は登録番号0986で受付け、植物栄養学をご専門の京都大学農学研究科の間藤 徹先生に回答をお願いしました。「植物体内で鉱物的物質が造られる」ことをどのような形でお知りになったのか分かりませんが、鉱物は「ほぼ一定の化学組成とほぼ一定の結晶構造を持つ、天然に産する無機固体」と一般に定義され、いろいろな成分組成があります。


植物は根から水に溶けたミネラル(無機物質)を吸収します。吸収されたミネラルは導管を使って茎や葉に送ります。植物が吸収できるのは水に溶けている養分なので、鉱物と呼ばれているような、非常にこまかい石のようなもの、はふつう根から吸収することは出来ません。しかし例外もあります。イネの葉やモミにはケイ酸という物質がたくさん含まれており、ケイ酸がたくさん含まれるといもち病にかかりにくくなるので、肥料として水田に撒かれています。イネに含まれるケイ酸とは実は石英や水晶の成分となっている二酸化ケイ素という物質とまったく同じものなのですが、結晶のできかたがすこし違っていて、イネの葉は石ほど硬くはなりません。このケイ酸は水に薄い濃度で溶けています。灌漑水や田面水がイネに吸収され、葉から水分が蒸散してしまうと葉の中に残ったケイ酸がだんだん濃くなって、最後は小さな石のようになります。虫眼鏡が要るくらいの大きさです。
これを植物が作ったオパール(宝石の一種)という意味でプラント オパールといいます。これは鉱物の一種ですからイネが栽培された土壌にはかならず残っています。古代の遺跡からたんぼの跡が見つかるとき、そこで水稲を栽培していたかどうかは土の中にプラントオパールが見つかるかどうかで判断します。プラントオパールになってしまうと植物にはあまり作用はないと思いますが、プラントオパールが出来るくらいケイ酸を吸収したイネはいもち病などにかかりにくくなるようです。ケイ酸はイネばかりでなくトクサ(常緑生のシダ類)にも大量に吸収され蓄積されています。そのため昔から紙ヤスリのように使われていたことはご存じのことと思います。
無機物結晶としては炭酸カルシウムの結晶がイラクサ科、クワ科、ニレ科の植物の表皮近くにある大型化した細胞内に形成され、鍾乳体と呼ばれています。このほか、鉱物とは言えないかもしれませんがシュウ酸カルシウムの結晶が多くの植物に形成されています。いろいろな形で形成され、針のような細い結晶が束になる束晶は「えぐみ」の原因になっています。

間藤 徹(京都大学大学院農学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2006-09-09
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