質問者:
教員
なりた
登録番号0936
登録日:2006-08-01
小学校6年生の理科の授業です。光合成と肥料
今回は”植物の光合成の働きを通して,植物は動物にとって必要のない物を必要な物に変えている地球上の生産者であること””植物の巧みさやすばらしさ”を味わわせたく思っています。
前段が長く,言葉足らずになっていますが。
学習は,人間にとって必要なでんぷんを軸に,動物と植物の体のつくりとはたらきの学習を2学期から始めます。
植物の栄養源がでんぷんであること,しかし水にも肥料にも根にも土にもでんぷんはないことから,葉で作られているのでは?と,学習に入ります。
①いろいろな植物を調べて,でんぷんが作られていることを知る
②でんぷんができる時とできていない時があることを日光と関係付けながら調べる
③自分たちに必要なでんぷんを作っている唯一の生き物だと知る
その中で,肥料の扱いにこだわってしまっているのです。
5年生の学習では,植物が元気に成長するためには日光と肥料が必要でした。
日光が必要なことは,この6年生の学習で明らかになるのですが,肥料はあやふやになってしまいます。
光合成自体には必要ないことは分かっているのですが,光合成のために必要となることも扱いたいのです。
また,人間にとって必要のない肥料の成分が植物には必要であることから,植物との接点に気付いてほしいのです。
そこで,肥料の実験をしたいのですが
①水耕栽培で,水だけの植物と肥料を加えた水の植物では,でんぷんのでき方に差は出るのでしょうか。
②またこれらの考え方はよいのでしょうか。
(いろいろな本を読んだり,話を聞いたりしたのですが・・・うまく,まとまらないのです。)
お忙しいとは思いますが,よろしくお願いいたします。
なりた さま
二酸化炭素と水、さらに少なくとも14種の元素を適当な量と割合で含む無機養分、および、太陽光があれば、植物は光合成によって有機物を合成することができ、これを用いて光合成をする“装置”も自ら作ることができる唯一の生物です。植物は光合成によって地球環境に有機物を供給し、この有機物が植物以外の地球のすべての生物―動物や菌類、光合成をしない微生物―の栄養源(食糧)になっています。さらに、過去の光合成産物である化石燃料を含めて考えれば光合成産物はヒトにとって重要な有機資源、有機素材でもあり、エネルギー源にもなっています。この基本原理を完全に理解できるためには、無機物のみから太陽の光エネルギーだけで有機物を合成することが、植物以外ではどんなに困難であるかを理解できるようになるまで難しいでしょう。
第一のご質問:①デンプンは植物特有の貯蔵型の高分子炭水化物ですが、光合成で二酸化炭素からできる初期産物ではありません。葉でも昼間光合成が進行している間、葉緑体に光合成産物からデンプンを合成して貯えますが、夜間にはアミラーゼで分解されて糖となり、この糖が若い葉ならばその葉の成長に、成熟葉であれば若い葉の成長に、さらに、種実では糖からデンプンに貯蔵用として再び合成されます。従って、植物のどの器官の、どの成長時期のデンプンを調べるかによってデンプンの意味が違います。例えば、ジャガイモ塊茎のデンプンと光合成を直接に結びつけるのは難しいのではないでしょうか。②は葉で光合成が進行してデンプンが合成されることに、太陽光が必要なことを直接的に示す実験で、わかりやすいと思います。③は二酸化炭素、水、無機養分だけからデンプンを合成できるのは植物だけだ、を強調されればよいと思います。
第二のご質問:ヒトにとって必要のない無機(肥料)成分---は、適当ではありません。ヒトも植物とほとんど同じ無機養分が必要です。植物だけに必要な元素、ヒトだけに必要で植物には不要な元素はありますが、ヒトはこれを食物から摂取しているため見かけ上、肥料成分(無機成分)がヒトには不要のように見えるだけです(それでも食塩は摂ります)。①水だけでは種子の中の無機養分がある間は何とか成長できますが、これがなくなると成長できません(葉が2,3枚程度まで)。当然、葉も小さくなり光合成はできなくなります。無機養分は成長(光合成の装置(葉)を作りあげる)に必要であるばかりでなく、光合成の過程そのものにも絶対に必要です。無機養分が欠乏すると葉が黄色くなったりして光合成機能が低下します。特に窒素成分(硝酸塩またはアンモニウム塩)が欠乏するとタンパク質が合成できないため、多量に必要な光合成のための酵素含量が低下し、光合成によってデンプンを合成する能力も低下するでしょう。
二酸化炭素と水、さらに少なくとも14種の元素を適当な量と割合で含む無機養分、および、太陽光があれば、植物は光合成によって有機物を合成することができ、これを用いて光合成をする“装置”も自ら作ることができる唯一の生物です。植物は光合成によって地球環境に有機物を供給し、この有機物が植物以外の地球のすべての生物―動物や菌類、光合成をしない微生物―の栄養源(食糧)になっています。さらに、過去の光合成産物である化石燃料を含めて考えれば光合成産物はヒトにとって重要な有機資源、有機素材でもあり、エネルギー源にもなっています。この基本原理を完全に理解できるためには、無機物のみから太陽の光エネルギーだけで有機物を合成することが、植物以外ではどんなに困難であるかを理解できるようになるまで難しいでしょう。
第一のご質問:①デンプンは植物特有の貯蔵型の高分子炭水化物ですが、光合成で二酸化炭素からできる初期産物ではありません。葉でも昼間光合成が進行している間、葉緑体に光合成産物からデンプンを合成して貯えますが、夜間にはアミラーゼで分解されて糖となり、この糖が若い葉ならばその葉の成長に、成熟葉であれば若い葉の成長に、さらに、種実では糖からデンプンに貯蔵用として再び合成されます。従って、植物のどの器官の、どの成長時期のデンプンを調べるかによってデンプンの意味が違います。例えば、ジャガイモ塊茎のデンプンと光合成を直接に結びつけるのは難しいのではないでしょうか。②は葉で光合成が進行してデンプンが合成されることに、太陽光が必要なことを直接的に示す実験で、わかりやすいと思います。③は二酸化炭素、水、無機養分だけからデンプンを合成できるのは植物だけだ、を強調されればよいと思います。
第二のご質問:ヒトにとって必要のない無機(肥料)成分---は、適当ではありません。ヒトも植物とほとんど同じ無機養分が必要です。植物だけに必要な元素、ヒトだけに必要で植物には不要な元素はありますが、ヒトはこれを食物から摂取しているため見かけ上、肥料成分(無機成分)がヒトには不要のように見えるだけです(それでも食塩は摂ります)。①水だけでは種子の中の無機養分がある間は何とか成長できますが、これがなくなると成長できません(葉が2,3枚程度まで)。当然、葉も小さくなり光合成はできなくなります。無機養分は成長(光合成の装置(葉)を作りあげる)に必要であるばかりでなく、光合成の過程そのものにも絶対に必要です。無機養分が欠乏すると葉が黄色くなったりして光合成機能が低下します。特に窒素成分(硝酸塩またはアンモニウム塩)が欠乏するとタンパク質が合成できないため、多量に必要な光合成のための酵素含量が低下し、光合成によってデンプンを合成する能力も低下するでしょう。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2006-09-09
浅田 浩二
回答日:2006-09-09