一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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花粉管の伸長について

質問者:   高校生   けんじ
登録番号1026   登録日:2006-09-01
大学受験のため、花粉管の問題を解いたことがきっかけで花粉管の伸長について興味を持ちましたので質問させていただきます。
花粉管は浸透圧差によって周りから吸水することで伸長すると知ったのですが、その際、吸水し続ければ花粉管内の濃度は低くなりやがて周りとの濃度差はなくなり伸長が止まってしまうと思うのですが、実際は珠孔までしっかり伸びていきます。なぜですか?
また、花粉管の伸長と花粉管内の膨圧は何か関係があるのでしょうか??
けんじさま

 みんなの広場へのご質問有難うございました。頂いたご質問の回答を植物の生殖についての研究をなさっておられる東京大学の東山哲也先生にお願いいたしましたところ、以下のような回答をお寄せ下さいました。本当の生き物は高校の生物で習うほど簡単では無いので、きちんと説明しようと思うと、高校の生物では出て来ないような言葉も使わなくてはなりません。少し難しいかもしれませんが、勉強して理解して下さい。

東山先生の回答
 植物には液胞という構造があり、花粉管が伸長する際にも、細胞の中はほとんどが液胞で満たされていきます。細胞膜や液胞膜は脂質二重膜という構造でできていて、極性をもつ水やイオンなどを通しにくいものです(水分子が自由に行き来できる半透膜とは違います)。細胞膜や液胞膜にはそれぞれの分子に特異的な様々なチャネルやトランスポーターといったタンパク質が埋め込まれていて、水やイオンなどのダイナミックな流れを制御します。細胞外から取り込んだ水を、液胞という区画に送り込んでいく、こうした水分子の流れの制御により、細胞(細胞質)の浸透圧を一定に保ちながら、多量の水を吸収し続けることが可能になると考えられます。実際に、花粉管は細胞内の浸透圧を外液の浸透圧よりもやや高い値に調節し、伸長できることが知られています。吸水の駆動力は基本的に浸透圧差によりますので、花粉はあらかじめ十分な溶質をもち、細胞外からも溶質を取り込みながら、うまく水の流れを制御し、胚珠まで伸長できるんでしょうね。ちなみに水分子を通すチャネルはアクアポリンと呼ばれます。また、花粉管の膨圧が適当な値に保たれることが、花粉管の伸長(速度や長さ)に重要であることが知られています。花粉管が最後に精細胞を含む内容物を雌の胚嚢(はいのう)に送り込むときにも、おそらく膨圧を駆動力として、激しく多量の内容物が放出されます。

東山 哲也(東京大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2006-09-07
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