一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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りんごのタンニンについて

質問者:   大学生   ono
登録番号1184   登録日:2007-02-06
はじめまして。こんにちは。
大学の論文で、「りんごのタンニン量の変化」について研究している学生です。
文献を調べても、分からない項目が2つあり、そのことについて質問をさせていだだきます。

1)りんごのどの部分でタンニンが合成されているのか。
2)りんごのタンニンは成熟に伴って減少するが、どのような過程をふまえて減少するのか。

 2)の質問は、私は果実中のアルカロイドや蛋白質と結合し不溶化してしまうため、抽出量が減少するのかと考えています。しかし、確信が無いため、専門の先生に質問させていただきました。
 ご多忙の身とは思いますが、何卒よろしくお願いします。
 それでは失礼します。
ono さま

リンゴ果実のタンニンについてのご質問ですが、カキと異なりタンニンをあまり集積しないリンゴの果実については測定法も重要です。タンニンを多量に含むどんぐりについては、これまで本質問コーナーで、タンニン(ポリフェノールともよばれます)の種類(登録番号0820、登録番号1152)、測定法(登録番号0210)について、それぞれの回答に解説されていますので参考にして下さい。また、タンニンをあまり含まないホウレンソウやモチノキの葉が傷を受けて生成するタンニンについての(登録番号1119、登録番号1109)に対する回答も、リンゴの場合の結果を考える上で参考になると思います。

ところで、リンゴ果実の成熟に伴うタンニン含量の変化について測定されたとのことですが、開花し、そこに着生した果実を順次日を追って採取して試料とされたのでしょうか。第一のご質問である、リンゴ果実のどの組織、細胞でタンニンが合成されているかについては、特定の細胞ではないと考えられます。リンゴの果肉細胞は、すべての成熟した植物細胞の特徴である、細胞体積の大部分(〜80%)を占める液胞をもち、液胞にはタンニン(ポリフェノール)の基質となるフェノール類が含まれています。しかし、何かの原因で細胞が傷を受けると液胞のフェノール類と、液胞以外の細胞分画にあるフェノールオキシダーゼが接触できるようになり、フェノール類が酸素によってポリフェノール(タンニン)に酸化されます。これは、リンゴの果実のどこに傷をつけても、切り刻んでも白かった表面が褐変(ポリフェノール形成)することから、タンニンはほとんどすべての細胞が、傷を受けると合成することができると考えてよいでしょう。
このため、リンゴ果実のタンニン定量には、定量操作中にタンニンが生成するのをできるだけ抑えることが必要です。果実の摩砕は細胞に傷をつけるため、酸素との接触を避ける、ポリフェノールオキシダーゼ活性を阻害する(登録番号0933の回答参照)などの方法によって、これらの測定操作の間にタンニンが生成しないようにし、もともと細胞にあったタンニンのみを測定できるようにすることが大切です。
タンニンがタンパク質と結合しやすいことは多くの種類のタンパク質について認められています。果実の成熟後期に測定されたタンニンが減少するのはこのためではないか?が第二のご質問です。しかし、ここで測定されたタンニンの含量が、もともと果実に含まれていたタンニンなのか、それとも測定操作中に生成したタンニンであるかによって、その意味は大きく変わるため、その点をはっきりさせることが必要です。

浅田 浩二(JSPPサイエンスアドバイザー)
  
回答日:2012-08-25
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