一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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シラカンバはなぜ白いのか

質問者:   大学生   美生
登録番号1423   登録日:2007-09-12
樹皮の色は種によって違いがあって当然だと思いますが、白というのがあまりにも特徴的なので、どのような仕組みがあってシラカンバの樹皮が白くなるのか気になりました。図書館で調べても、シラカンバの特徴として‘樹皮が白い’と書いているだけでその理由まで探すことができませんでした。学生なのに低レベルな質問ですみませんが、ずばり『なぜシラカンバの樹皮は白いのか』です。
予想①樹皮に白色の色素を発現する遺伝子がある
予想②もっと別の生理学的なからくりがある
たぶん①かなぁと思いつつも②のような興味深い回答を期待したいです。でも①だとしても、そんな独創的な遺伝子を持つシラカンバはすごいと感心します。
美生 さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。

シラカンバの林は実に美しい景観を与えてくれますが、白色の樹皮を持つ樹木はきわめて少ないですね。ところで、白色とはなんだと思われますか?赤、青、黄などにはそれぞれの色を示す色素(物質)がありますが、「白色の色素」と言うものはありません。その理由は大学生ですからすでにお判りだと思います。可視光のすべてを反射してしまうものは白く見えるだけです。ガラスは無色透明ですね。色はまったくついていません。しかし、ガラスを細かく粉砕した粉は白く見えます。光を反射するからです。
シラカンバの樹皮表面には「白い粉」が吹き出したようについているので樹皮が白く見えるのです。もちろん、シラカンバの生きている細胞で作られた物質が排出されて「粉状」なったためです。その主要な成分はベチュリンと呼ばれるルパン型トリテルペノイドで、その他にベチュリン関連化合物、ベチュリン酸、ルパノールなどが含まれています。これらの物質自体は無色ですが、結晶性が高いので微細な粒子、「白い粉」となるのです。トリテルペノイドとは、5個の炭素からなるイソプレン単位が6個結合して30個の炭素原子からなる脂質性の化合物群を指しています。鮫肝油成分のスクワレンやスクワランは鎖状のトリテルペンですが、多くは4環あるいは5環の環状構造をつくっており、ステロイド、サポニンなど植物成分として珍しいものではありません。ルパン型は5環性のトリテルペンです。ベチュリンとその関連物質はシラカンバの樹皮に多く含まれていますが、樹皮ばかりでなく材にも含まれています。
抗エイズウイルス作用があるとのことで注目されているようです。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2007-09-22
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