一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物のガス交換について

質問者:   一般   ゆかママ
登録番号1712   登録日:2008-07-28
 植物は光合成を行うために、二酸化炭素を取り込み、呼吸を行うために酸素を取り込むとありますが、細胞膜で選択的に空気中から二酸化炭素や酸素を取り込んでいるのでしょうか?色々調べましたがわかりません。教えて下さい。
ゆかママ さま

動物ではガス代謝のための循環系があり、肺―(心臓)―血液―血管を通して体の隅々の細胞まで酸素(O2)を送り込み、細胞で食物がO2によって酸化され発生する二酸化炭素(CO2)が逆の経路で放出されます。これが動物での呼吸ガス代謝の大まかな姿ですが、植物では呼吸と共に、呼吸とは逆の過程、太陽光エネルギーを用いCO2 と水(H2O)とから有機物の生産(CO2固定反応)を行い、同時にO2を発生する光合成の過程があり、葉の細胞にある葉緑体で進行しています。植物には動物のガス代謝に相当する循環系はなく、植物のガス代謝は、それぞれの組織、細胞でのCO2、 O2の(大気の濃度に比べ細胞内の濃度が高い時に放出、低いときに吸収、すなわち、高い濃度から低い濃度への)物理的な拡散によって進行しています。

根など葉以外の組織に葉緑体はなく、呼吸を担うミトコンドリアのみが存在しています。根のような呼吸のみを行う組織のガス代謝は、細胞表面―細胞間隙―細胞の経路でO2 の吸収、その逆の方向でCO2の発生が進行します。その詳細については登録番号1130, 登録番号1256, 登録番号1625への回答をご覧下さい。植物の組織では循環系がないため、組織に細胞がびっしり詰まっている動物と異なり、葉のような薄い組織でも細胞のない空間(細胞間隙)がたくさんみられます。これはCO2、O2の拡散速度が、気体の状態の方が、水の中よりも〜1万倍も速いためです。実験的に葉の細胞間隙に水を充満させると、葉のガス代謝速度は極端に低下します。

葉緑体をもつ葉の組織では、昼間、太陽光の照射を受けているときは葉の裏側の表皮細胞にある気孔―細胞間隙を通して、大気からCO2が吸収され、同時にO2が大気に放出されて、光合成が進行しています。葉の気孔の開閉などについては登録番号1312, 登録番号1598, 登録番号1607などに対する回答を参照して下さい。葉の組織では光合成が進行している昼間でも、呼吸は光合成に比べかなり低い速度ですが進行しています。しかし、夜間には、光合成が進行しないため、葉の組織では呼吸のみが進行していることになります。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2012-08-25
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