一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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花の香りの時間的変化

質問者:   一般   カメリア
登録番号1947   登録日:2009-03-25
花の香りは午前中に強いものが多いような気がします。
例えばヒゴスミレ。また世界らん展でフレグランス部門の優勝花は午後には殆ど香りがありませんでした。今ソメイヨシノの香りがラジオで話題になっているのを聞きましたが、早朝(夜明けの頃)にはほのかな香りがするとのことです。
花の香りの強さは受粉者の活動する時間帯に強いと一般に言われていると思いますが、午前中に強いというのも同じ原則によるものですか?
ご教授よろしくお願い致します。
カメリア さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。

被子植物は花という生殖器官で有性生殖を営み、遺伝子の混合、組み替えを繰り返して進化し繁栄をしてきたものです。
花は雌しべが雄しべの花粉を受粉することで種子をつくり、次世代を確保しますので、効率よく受粉する仕組みが大切です。受粉の仕組みには風媒と虫媒がありますが、被子植物はもともと風媒から虫媒へと進化したと考えられています。それは、虫には好みがありますので限られたグループの花を訪れる傾向があり大量の花粉を標的となる花に運ぶことができるので種の繁栄に有利だからです。

虫媒となった植物は花粉を運んでくれる昆虫の種類や好みに合わせて花の形、色、香り、蜜の出し方などを多様に変化させて虫と植物とは共進化してきました。そのため現在では、朝に活動する昆虫を花粉媒介者とする花は朝に、日中に活動するミツバチなどを媒介者とする花は日中に、夜間活動するガなどを媒介者とする花は夜間に咲くようになったと思われます。また、昆虫を呼び寄せることに有効な香気成分も昆虫の活動時間にあわせて放出されるばかりでなく、受精を終わった花ではそれ以上昆虫を惹きつける必要がありませんので香気成分の放出を止めることも知られています。

なおご質問に直接関連するものとして、本学会が監修した次の書物はいろいろな側面から花と花粉媒介者との関係をも解説していますのでご参考になってください。

植物まるかじり叢書3 西村尚子著「花はなぜ咲くの?」化学同人 2008
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2009-03-31
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