一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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イチョウの子葉はどれ?

質問者:   一般   中村
登録番号2119   登録日:2009-11-30
種子植物の仲間分けをしてみると、被子植物(双子葉類、単子葉類)と裸子植物に大別できます。

そこで、種子からの芽生えの様子を知りたいと思い、調べてみました。すると、裸子植物は「子葉は2枚以上で、マツ類などのように多数のことが多い。」ことがわかりました。イチョウはどうだろうと調べてみたら、「子葉は3枚」と書かれていました。「タネはどこからきたか? 鷲谷いづみ、埴沙萌」という本にイチョウの芽生えの写真が載っています。ギンナンから地面に向かって根っこが、上にむかって茎がでており4枚ほど葉っぱが見えます。でもこの葉っぱはイチョウの葉っぱにそっくりで、いわゆる「子葉」なんだか「本葉」なんかが区別がつきません。イチョウに3枚あるという「子葉」は芽生えのどこに見えるのでしょうか。

ちなみに、「単子葉類」の芽生えを調べたとこ、意外に思ったことがあります。ヤマユリとかハナミョウガとか、地上に一枚だけ葉っぱがでるので、これが「子葉」かと思ったら、子葉鞘とかいう、とても目立たない部分だということでした。

なので、もしかしたらイチョウの子葉も、ギンナンのなかにかくれていたりするのかもしれない、と思っています。正確なところを教えていただけないでしょうか。
中村さま

みんなの広場へのご質問有り難うございました。頂いたご質問の回答を、小石川植物園の園長をなさったこともある東京大学名誉教授の長田敏行先生にお願いいたしましたところ、詳しいご回答をお寄せ下さいました。長田先生から頂いたご回答をもとに、一般的なことを付け加えてお届けします。まず、イチョウの子葉の数は基本的には2で、それよりも多い事もあるということです。相馬早苗さんと云う方が「Ginkgyo Biloba-A Global Treasure」(Springer 1997)の、p.61に図入りで示しているそうです。イチョウの子葉は中村さんが想像なさった通り、ギンナン(種子)の中に隠れていますが、相馬さんの図には、子葉が種子に隠れているのが見えるように描かれているそうです。被子植物は双子葉植物と単子葉植物物に分けられていますが、子葉の数だけで分けられているのではありません。子葉の数は双子葉植物と単子葉植物を区別するいろいろな性質のうちの一つにすぎないのです。双子葉植物の中には子葉が1枚の植物もあります。セツブンソウ、ニリンソウ、コマクサ、ヤマエンゴサク、ムシトリスミレ、ヤブレガサなどがその例です。また子葉の数が8〜11と多い植物も外国では報告されています。双子葉植物では子葉を本葉と区別するのが容易ですが、単子葉植物の場合、一見して子葉を本葉と区別するのが難しい場合が多いです。子葉鞘という言葉に出会われたそうですが、子葉鞘はイネやトウモロコシなどのイネ科の植物に見られます。イネ科の植物の子葉はどれかということについてはいろいろな意見があるそうですが、子葉鞘を含む部分が子葉だとする考えが一般的のようです。子葉鞘と云うのだからその中にある葉が子葉かというとそうではなく、子葉鞘の中にあるのは本葉です。ですから、子葉鞘という言葉は適当でありません。幼葉鞘という言葉のほうが良いと思います。

長田 敏行(東京大学名誉教授)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2009-12-09
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