一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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子葉が出てきたころの茎の色の違い

質問者:   教員   third-8
登録番号2207   登録日:2010-05-27
私は小学校3年生の担任をしているものです。理科の授業でホウセンカの種をビニルポットに2〜3個植え、育てる事にしました。その後発芽し、子葉が出てきたころ、観察していた子どもから、「僕の2つ出てきている。でも、茎の色が違うよ。」と言われました。私も見てみると、一つは赤っぽく、もう一つは黄緑色でした。この色の違いは、何が原因なのでしょうか?また、花の色などに関係しているのでしょうか?教えてください。
third-8 さま

ホウセンカの種子をまいて、発芽して子葉が出た頃、一つのめばえの茎の色が赤色、もう一つは黄緑色だったとのことですが、これらの相違は次の少なくとも二つがその原因と考えられます。茎が赤色になるのはアントシアン(花の赤色色素、モミジなどの紅葉した葉の赤い色素、など、アントシアニン系色素はこれまで構造の異なる500種以上が見つけられています)によるものと思われますが、これらについては本質問コーナーで、アントシアニンで索引していただければ、どんな時に植物がこの色素を合成し、どんな役割をもっているかが示されています。春先のバラ、ウバメガシの葉が赤くなるのもアントシアニン色素が合成されるためです(質問登録番号0388, 登録番号1567, 登録番号2053などへの回答を参照)。春先に若い葉でアントシアニンが合成されるのは、アントシアニンが太陽光、特に紫外線を吸収し、これによって若い葉が光による障害を受けないようにするためです。

ホウセンカのめばえでアントシアニンの合成に差があった原因として、二つのポットの位置によって太陽光の照度が異なり、赤色にならなかっためばえは太陽光があまり当たっていなかったため、アントシアニンの合成が進行していなかったことが一つの原因として考えられます。アントシアニンの合成は強すぎる光の害を防ぐためであり、一般に強い光の条件でなければ合成が進行しません。

もし二つのホウセンカのめばえが全く同じ照度の太陽光の下で成長していたとすれば、種子の遺伝的な差が問題になります。アントシアニン合成のために必要な遺伝子が欠損している植物は、アントシアニンが合成できず、高い照度の光の下では成長に障害を受けやすいことが示されています。同じ園芸品種のホウセンカでも、種子が全て遺伝的に全く同じでない場合も多いと考えられます。遺伝的に全く同じ、いわゆる“純系”の種子は自家受粉を何度も繰り返さないと得られません。

めばえのアントシアニンの含量が異なるようになった原因には、1)めばえの生育についての光条件が同じではなかった、2)赤色にならなかっためばえの種子はアントシアニンを合成できない、の二つの原因が考えられます。このどちらであるかを確かめるため、もう少し多くの種子を、できるだけ光条件を同じになるようにして播き、めばえの色を調べてみることが必要です。2)の場合、花の色素もアントシアニンであることが多いのですが、もし、ホウセンカめばえのアントシアニンと花のアントシアニンと同じ構造であれば、茎が赤色にならなかったホウセンカは花も赤くならないかも知れません。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2010-06-02
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