一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ミョウガから見た「花ミョウガ」の意味

質問者:   一般   ノンクラ
登録番号2311   登録日:2010-09-23
庭にミョウガがあり、毎年「花ミョウガ」を収穫しています。
花ミョウガと言って食すのは、花でなくその元の「蕾」とか。

Q:「花ミョウガ」を収穫しないで放置すると、種ができるのですか?

ミョウガは、地上部が枯れても地下茎が残って毎年収穫でき、
繁殖も地下茎を切り取って利用するのが普通。
でも、花が咲くのだから種も出来そう。

更に、ミョウガは日当りの悪い方が良いとされ、そのミョウガ藪の株下で
咲く花に来る昆虫がいるような気がしない。
立派な「蕾」を作るのはミョウガにとって無駄な努力のように思える。

竹のように地下茎で繋がってる直物は、(DNAが同じ)同一個体
が密生し、近隣に別DNA個体がいない。
仮に花粉を運ぶ昆虫がいても自分と同じDNA同士となる確率が高く、
この面でも無駄な努力。
○千年・○万年に一度の危機に備えた戦略なのでしょうか
ノンクラ様

 みんなの広場へのご質問ありがとうございました。頂いたご質問の回答を東京大学の塚谷裕一先生にお願いいたしましたところ、以下のような詳しいご回答をお寄せ下さいました。きっと、満足して頂けるものと思っております。


ノンクラさん

 質問をありがとうございます。ミョウガですね。私も好物です。このミョウガ、原産地はユーラシア大陸で、日本には大昔、はるばる運ばれてきたもののようです。ミョウガの近縁種は熱帯アジアにものすごくたくさん自生していて、まだ新種が続々と見つかるくらい、アジアで繁栄しています。日本で栽培されているミョウガは多分、それらのどれかから飼い慣らされてきた栽培種でしょう。その過程で、本州のヒガンバナのように、染色体のセット数が奇数のものが選ばれてしまったようで、そのためになかなか結実しません。しかし時として運良く結実することもあります。地方のニュースなどで「ミョウガに赤い実がなった」と取りあげられることがあるので、写真をご覧になったこともあるかもしれません。
 というわけで、今はなかなか実のならないミョウガ、たしかにタネで増えることはありませんが、祖先種の時には、ちゃんと実がなっていたはずです。また日陰で花に虫が来るとは思えないとお書きになっていますが、どうしてどうして、世の中、日向をひらひらと舞う蝶々ばかりが虫ではありません。また世の動物たるもの、あのクリーム色に輝く美しい花を放っておくはずがありません。ミョウガを含むショウガ科の植物は花の美しいものが多く、ミョウガのように地面すれすれに花を咲かせるものもまったく珍しくありません。これはそれぞれ、花粉を運んでもらうのに固有のお得意さんを持っているからです。花の形が独特なのは、そのお得意さんに合わせた結果なのです。ちなみにボルネオ島のランビル国立公園での、京都大学生態学研究センターの酒井先生の研究によると、ショウガ科の植物は、だいたいがコシブトハナバチか、コハナバチのような蜂類に花粉を運んでもらっているようで、中にはクモカリドリという鳥をお得意さんにしているものもあるそうです。鳥も蜂も学習能力が高く、またパトロール範囲も広いので、彼らに任せておけば、十分に他の株との間の花粉の交流も実現するわけです。
 もちろん、株で無性繁殖するのが今はミョウガの主流です。種子繁殖するばかりが能ではなく、クローンでいることに何も問題がないなら、無性繁殖するのがもっとも効率が良いのは確かです。ミョウガの場合、人間が手をかけて害虫や病気を防ぎ、畑を作って増やしてくれているのですから、クローンでいることがやはりベストなのでしょう。なお無性生殖と有性生殖のメリットの違いは、以前この欄で答えたことがあるので(登録番号1885 登録番号2155)、そちらもご覧下さい。

塚谷 裕一(東京大学大学院理学系研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2010-09-28
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