一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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雄蕊と雌蕊の数が変わることの意義

質問者:   大学生   渡邉 正和
登録番号2567   登録日:2011-12-09
私は小さい頃から山に入り,植物と触れ合って過ごしてきました.
特に私のお気に入りの植物がカンアオイです.
独特の形状の花に加え,色や形の変化が同種内で広くみられるところに魅力を感じています.

最近カンアオイについての本が出版されたと聞きさっそく購入したのですが,
そこで南西諸島のカケロマカンアオイ,トリガミネカンアオイ,オモロカンアオイ,エクボサイシンなどに見られる特徴として,雄蕊と雌蕊の半減があると目にしました.

雄蕊と雌蕊の数が変わると,一体その植物(種)にとってどんな影響があるのでしょうか?
生態的にメリットがある,また種間での交雑を妨げるといった機能をもつのでしょうか?

教えてください.どうかよろしくお願いします.
渡辺さま
 みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。回答が大変遅くなって申し訳ございませんでした。頂いたご質問の回答を基礎生物学研究所の長谷部光泰先生にお願い致しておりましたところ、以下のような回答をお寄せ下さいました。引用文献の入手先が紹介されておりますので、ご参考にして下さい。



【長谷部先生からのご回答】
 カンアオイ属は形態(Kelly, 1997, Amer. J. Bot. 84: 1752-1765)、遺伝子の塩基配列(Kelly, 1998, Amer. J. Bot. 85: 1454-1467)に基づいた系統解析の結果によると、 雄蕊12個、雌蕊6個の種類が祖先的であり、カケロマカンアオイのように雄蕊や雌蕊が減少した種類は派生的な種類であると推定できます。カンアオイ属でどうして雄蕊、雌蕊の減少がおこったのかはよくわかっていません。

他の被子植物でも同じ科や属の中で雄蕊や雌蕊の数が減少する場合があります。媒介昆虫を誘因するために花粉を使う場合は雄蕊の数が多く、蜜を使う場合は雄蕊の数が減少し密腺が発達する傾向があります。また媒介昆虫の大きさに合わせて花の大きさや形が変わることもあります。この場合は、花全体が変化しますが、雄蕊や雌蕊の数はかわらない場合が普通です。

引用した論文は http://www.amjbot.org/ から入手できます。花の進化については、種の分化と適応(河野昭一、三省堂)、現代生物学大系7a1高等植物A1(中山書店)が参考になります。

長谷部 光泰(基礎生物学研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2012-01-20
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