一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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害虫がつかない理由と病気にならない理由

質問者:   小学生   ちーた
登録番号2685   登録日:2012-07-17
毎年ベランダで野菜を育てています。ピーマンはアブラムシがついていつも困っています。そこで粒剤の農薬をまきますが、どのような理由でアブラムシがつかなくなるのか不思議です。ピーマンが農薬をすって茎や葉にいくとアブラムシにはなぜわかるのでしょうか?匂いや味に変化があるのでしょうか?それとも農薬で死んだアブラムシを見てよってこなくなるのでしょうか?
きゅうりのうどん粉病にもこまりますが、肥料を少なめにするといいと農家の方に聞きました。うどんこ病はカビですが、なぜ肥料が関係あるのでしょうか?栄養がたっぷりだと丈夫でカビに強いならわかります。少ない方がいいとすると、トマトなどは水が少なめの方がおいしいのと同じような理由ですか?肥料多めと少なめのきゅうりで実験したら違いはでるでしょうか?それともそれほど違いはでないでしょうか?
ちーたさん

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。ちーたさんはアブラムシをやっつけるのに、どんな農薬を使ったのかな?農薬にはいろいろ種類があります。害虫(昆虫)をやっつけるものは殺虫剤、カビなどをやっつけるのは殺菌剤または防カビ剤と呼んでいます。殺虫剤は言葉のとおり、植物についた虫を殺してしまいます。葉についた虫に直接液体の殺虫剤を吹き付ける場合もありますし、粒状のオルトランという農薬のように根元の廻りの土にまくと,それが植物にしみわたって、茎や葉などに広がります。この場合は植物の内部から殺虫剤を与えることになり、そのような葉を食べた虫は死にます。もちろん、葉に外から吹き付ける場合でも、内部にしみわたって、身体の他の部分へ移動もします。そこで、うーたんさんのような疑問がおきてくるのですが、虫は植物に殺虫剤がまかれていることを、何らかの方法で知って、その植物にはよりつかないのかということです。むつかしい問題ですが、おそらく、農薬のにおいあるいは味で逃げるのだと思われます。最近の研究によると、虫の死骸にふくまれるある物質の臭いが、生きた虫を寄せ付けないということがわかっています。こういう物質は忌避剤(きひざい)とよばれます。忌避とは「いやで逃げる」ことです。窓にぶらさげておいたり、網戸に吹き付けたりしておくと、虫が入ってこないという商品が売られていますね。これは忌避作用のある薬が使われています。アブラムシが農薬のにおいや味をきらっているのか、死んだアブラムシが出す臭いが生きたアブラムシをよせつけないのかは分かりません。次にウドンコ病ですが、肥料をすくなくするとよいというのは、聞いたこともありません。もし、それが本当だとしても、ちょっと理由を想像することができません。農学関係のキュウリの栽培のについて研究されているかたがおられたら、分かるかもしれませんね。ウドンコ病の場合は胞子(植物の種子のような役割をします)が植物体について芽をだしはんしょくします。胞子は風邪などでとんできてくっつくものですから、虫のように逃げて行く訳ではありません。殺菌剤(防カビ剤)は植物体についた胞子を殺すか、芽を出させなくする薬です。もし、ウドンコ病がでたら、ただちに、感染した葉を切り取って焼いてしまうのが一番よいでしょう。

勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)

【回答追加】
ちーたんさま

 この前の回答の中で、ウドン粉病と肥料のことは分からないと書きましたが、そのご、広報委員長の長谷部先生が植物の病原菌のことを研究されている基礎生物学研究所の佐藤昌直先生と奈良先端科学技術大学院大学の稲田のりこ先生に聞いて下さり,次のような説明をいただきましたので、お伝えします。

『動物は病気になると身体全体が弱って、ひどいときには死んでしまいます。そのため、病原菌と戦って、病原菌をやっつけます。これは人間や植物も同じです。ところが、植物は、これに加えて、病原菌にたいこうする特別な方法を持っています。病原菌が感染すると、感染した部分(例えば葉)の細胞は弱ってしまったり、死んでしまったりします。うどんこ病菌のような病原菌は、生きている植物の部分から栄養をとって繁殖しますので、病原菌が感染した部分で栄養を作ることができなくなったり、死んでしまったりすると、そこで病原菌の繁殖が止まり、植物の他の部分に広がっていけないのです。「肉を切らせて骨を断つ」ということわざ(ご両親に聞いて下さい)に似ています。動物は、病気になったときに、体の一部が死んでしまってはこまります。でも、植物は、茎の先端でどんどん新しい葉を作って成長しますし、体の一部から新しい芽を作って再び成長することもできます。このために、動物にはできない体の一部を犠牲(ギセイ)にするという方法で病原菌と戦うことができるのです。
植物を育てるのに、適度な肥料を与えると、植物は両方の防御方法を使うことができます。ところが、肥料をやり過ぎると、体の一部を犠牲にするという方法が使え無くなってしまうのではないかと考えられます。肥料のやり過ぎは、植物をむりやり成長させることになります。ニワトリを小さな箱に入れて、えさをどんどんあげてむりやり太らせるのに似ています。肥料をやりすぎると、植物は体中が元気になりすぎて、病原菌に感染した部分で、成長をやめたり、死んでしまったりすることができなくなってしまうので,病原菌も一緒に繁殖を続けてしまうことになるのではないかと考えられます。』

上のような説明をいただきましたので、ウドン粉病のことを一寸調べてみました。ウドン粉病はキュウリだけでなくいろいろな植物にも感染します。私の家の庭では毎年「キョウカノコ」という植物の若い葉や花について困っています。ウドン粉病菌にはいくつかの種類があるそうです。ウドン粉病がつくのをふせぐためには、風通しがよいこと、水はけがいい土を使って根がよく成長すること、しかし、植物を乾燥させないこと、夜の高温多湿はさけること、そして肥料のやり過ぎをさけることが必要だそうです。肥料はとくに、チッソ肥料を少なくするのが良いそうです。チッソ肥料が多いと、葉や茎ががどんどん成長して行きますが、このような急速な成長は良くないようです。肥料の中で、カリ肥料はすこし多めがよいという説明もあります。ようするに、適度な肥料を与えることが大切です。ウドン粉病は先の回答にも書いたようにカビですから、感染は胞子でおこります。細菌が繁殖する場合とはちがいます。胞子が、例えば葉について、芽を出し成長するのです。だから、感染をふせぐには胞子がつかないようにしてやることです。風通しが悪かったり、植物が混み合っていると、胞子は植物につきやすくなります。葉にウドン粉病が発生して、その葉が死んでしまって、他の葉は大丈夫でも、死んだ葉の上でウドン粉病の胞子ができていると、これはほこりと同じように飛び散りますから、他の葉などにつくことになります。ウドン粉病があらわれたら、すぐにその葉を切り取って焼いてしまうのが安全でしょうね。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2012-07-26
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