一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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バナナの皮にシュガースポットが表れる理由

質問者:   会社員   バナナ
登録番号3046   登録日:2014-04-19
植物に含まれるデンプンのことを調べているうちに、未熟なバナナにはデンプンが多く、熟したバナナには少ないことがわかりました。そこで、バナナの皮に表れる茶色い斑点(シュガースポット)について疑問が生まれたので、教えてください。

質問①皮にシュガースポットがあるバナナは熟しているから甘いとよく言われますが、実が熟すと、なぜ皮が斑点状に褐変するのでしょうか。

質問②バナナが熟するということを簡単に説明する場合、「未熟なバナナにはデンプンが多く、あまり甘くないが、実が熟すにつれてデンプンが分解されてグルコース(ブドウ糖)が増加し甘くなる」ということで間違いないでしょうか。これに関連し、デンプンの分解に伴う糖の増加とシュガースポットの出現に直接的な関係はあるのでしょうか。

よろしくお願い致します。
バナナ さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
質問の①と②はバナナの熟度進行に伴って関連したものですので分けずにお答えいたします。
果物と言われる果実は生食されるものが主で、生食したときに美味しく感ずる段階を「熟した」と一般に表現しています。果実はある大きさになるまで成長すると成長を止めますが、その時にはまだ緑色で食べられる状態でありません(緑熟果)。緑熟果が時を経つにつれて食べられるようになる過程を追熟と呼び、その間に呼吸量の一過的増加、葉緑体から色素体の形成、有機酸類の減少と糖分の増加、香気成分の増加、組織の軟化などいろいろな生化学的な変化がおきます。バナナ緑熟果は20〜25%のでん粉を蓄積しており追熟過程ででん粉が分解されて糖分へ変化する特徴をもっています。果実を消費者に最適の時期に供給するためには、どのような熟度のときに収穫すればよいかを判定するために色の変化を指標とすることが一般に用いられています。
バナナについて米農務省は緑熟果から生食最適果までを7段階に分けており、果実全体が黄色になったものを第6段階、全黄色に褐色の斑点入ったものを第7段階としています。その後は褐色斑点が広がり果皮全体が褐色になるとともに果肉組織もいっそう軟化した過熟となり生食には適さないようになります。生食に適するのは第6、7段階で、糖分は第1段階の1.5%ほどから20%ほどまで増加し、逆にでん粉は20%から2%まで減少します。でん粉分解の初期では確かにブドウ糖が出来るはずですが、果肉内では、ショ糖、ブドウ糖、果糖が存在します。追熟後期にはショ糖はほとんど分解されているようです。
熟度が進行すると果皮が褐色になるのは、果皮に含まれるポリフェノール類がポリフェノール酸化酵素によって酸化され褐色物質へ変化するからです。熟度の進行とともに果皮組織も老化が進行して、細胞の構造維持力も衰えてきます。その結果、細胞内でポリフェノールを貯めている液胞と呼ばれる袋が破れ、細胞質にあるポリフェノール酸化酵素と一緒になり酸化が起こります。なぜ、斑点となるかですが、2つほどが考えられます。果皮は収穫、流通の過程でどうしても局所的な傷害を受けていますのでその部分の細胞が早く老化するため、また、細胞の老化は全体が一様に進行するわけではありませんので、早く老化した細胞の部分から褐色になるため、と考えられます。果肉の熟度と果皮の褐変との間には直接的な関係はありません。褐変の起きる前、第6段階ですでに20%程度の糖ができていますし、どの熟度段階の果実でも果皮に傷をつければその部分は褐変します。また、第7段階の果実を冷蔵庫に保蔵すると、果皮の褐変は著しくなりますが、果肉の熟度は進行しませんので短期間の保蔵をすることはできます。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2014-04-30
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