一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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夜間CO2濃度の影響

質問者:   一般   トラ
登録番号3618   登録日:2016-10-11
初めて質問させて頂きます。
ネット系メロン栽培で、夜間加温のため、
農業用ハウスヒーター(灯油)を使用。
CO2濃度は3500ppm位(推定値)に達した
このことが原因で雌花が開花しなかったのか、
分かりません。
他の原因では潅水過多、窒素肥料過多、日照不足、等、
考えられますが、上記原因とすれば次年度改善は
比較的容易ですが
CO2濃度が原因とすれば、外気取り込み、
排気はハウス外の加温設備を導入しなければなりません。
他の方の質問、”夜間CO2濃度上昇による呼吸への影響”で
東大生物科学の野口先生が回答されてますが
夜間CO2濃度と開花に限定して、ご回答下さるよう
お願い致します。
トラ さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問はかつて野菜茶業研究所で果菜類の研究をされておられた永田雅靖先生(現農業・食品産業技術総合研究機構)に回答をお願いし、次のようなお答えを頂きました。永田先生はたいへん詳しく実際的な解決法などを含めてお答えしておられますので参考になると思います。
植物の花成などの生理現象は何か一つの特定要素だけで起こるものではありませんので「夜間CO2濃度と開花に限定した」研究報告は見当たらないようです。

【永田先生のお答え】
お問合わせの現象は、「メロンの花飛び」とよばれる現象です。静岡農試の荒川 博さんが、1991年に出された報告があります。荒川さんとは、私が野菜茶業研究所の当時に、メロンの品質保持の件でつながりがありましたが、すでに退職されています。
そのため、私がわかる範囲でお答えさせていただきます。

メロンの花飛びは、生育が良い(草勢が強い)場合にも、生育が悪い(草勢が 弱い)場合にも、雌花の着生が不良ないしは不安定になります(「温室メロンの 花飛びの原因と対策」第10図参照)
http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010491101

したがって、質問者がご指摘のように、窒素過多でも起きますし、日照不足でも起きる可能性があり、様々な要因が影響しあって、何が原因かは、生育の状況等から総合的に判断する必要があります。また、メロン栽培時の炭酸ガス施用も、静岡農試が先頭をきって、検討してきた技術です(「温室メロンの炭酸ガス施用に関する研究」参照)
http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010262758

炭酸ガス施用は、メロンの高品質化に役立つ技術ですが、一般論から言えば、C3植物であるメロンでは、炭酸ガス濃度の飽和点は、1000 ppm ~ 1500 ppm程度と考えられます。また、炭酸ガス施用が品質向上に効果があると考えられるのは、日照がある時なので、通常は、温室の気密性等を考えて未明から炭酸ガス濃度を上げる管理が多いようです。このようなことから考えると、夜間に3500ppmという濃度は、かなり高いように思います。雌花の着生に影響を与えた可能性も否定できませんが、これまでに炭酸ガス濃度が非常に高い条件での研究から、これが花飛びの原因であると確定する科学的な根拠を示した論文は、ざっと調べたかぎりでは見当たりませんでした。また、上記のような知見から、他の要因の関与も否定できません。

今後、改善するとすれば、まずは、炭酸ガス濃度が1000ppm程度を目標に制御することでしょうか。ただし、冬期の夜温等の確保は、さらに重要でしょう。さらに、雌花の着生等は、品種も大きな影響があると思われますので、お使いのメロン品種の種苗会社にご相談されれば、花飛びの起こりにくい施肥や温度管理など、詳細な情報が得られる可能性がありますし、より花飛びの発生が少ない品種を紹介してもらえる可能性があります。また、暖房機メーカーに、同様な花飛びの事例がないか、そのような場合には、どのように運用するのが良いか確認 することも重要でしょう。各都道府県には、農業の普及指導を行う窓口がありますので、当該地域で、同様な事例があれば、解決策も含めて指導、助言が行われる体制になっていると思 いますので、ご
活用ください。
http://www.jadea.org/link/center.html

夜間の炭酸ガス濃度が花飛びの原因として特定する回答は難しいと思います。

 永田 雅靖(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2017-04-03
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