一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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木部と葉部の成分

質問者:   大学院生   ままちゃん
登録番号3811   登録日:2017-07-06
同じ樹木の一部である木部と葉部は香気はもちろん成分も異なります。なぜここまで違うのですか?植物にとって葉と木で成分を変えることに何のメリットがありますか?何が起こって成分に差が生まれるのですか?
よろしくお願いします
ままちゃん さま

ご質問ありがとうございます。
木部成分に関する研究をご専門とされている京都大学の鈴木史朗先生に回答していただきました。

【鈴木先生のご回答】
 木部と葉部は、同じ樹木の器官であっても異なる役割を担う器官であると考えられます。例えば樹木の二次木部は、巨大な樹体を力学的に支えると共に、根から吸収した水分を葉部などへ供給する役割を担っています。一方、葉部は、主に光合成をおこなって炭素固定し、光のエネルギーを化学エネルギーに変換する役割を担うと共に、水分を蒸散させ、根から吸収した水に溶解している無機塩類などの栄養分を葉や茎などの器官に供給する役割を担います。このように、木部と葉部は異なる役割を担う器官であることから、これらの器官を構成する細胞の種類、形態、構成成分もかなり異なることが想像できます。

 実際、木部は樹体を力学的に支える役割を担うことから、細胞壁は分厚く硬く、リグニン、セルロース、ヘミセルロースから構成された高分子で構成されています。一方、葉部は、水分通導を担う管状要素と、葉を支える木部細胞を除き、光が透過しやすいよう、細胞壁は薄く、セルロース、ヘミセルロース、ペクチンなどの高分子とやタンパク質から構成されています。このように、それぞれの器官の役割に応じて、適切な成分をそれぞれの細胞が産生していることから、葉部と木部では成分は大きく異なると考えられます。

 鈴木 史朗(京都大学・生存圏研究所)
JSPP広報委員長
出村 拓
回答日:2017-07-19
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