一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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種の油分の役割について

質問者:   自営業   姫野 宏
登録番号3847   登録日:2017-08-08
はじめまして。
近くに少子高齢化が進んでしまった限界集落があります。できるだけ手間がかからない農作物で何か特産品ができないかを考えています。
そこで思いついたのが『アボカド』です。
アボカドについていろいろ調べていると、発芽には温度や時期が大切なことはわかりました。
しかし「種をきれいに洗う」という多くの説明を見て疑問を感じました。
それは「そもそも種の油分は何のためにあるのか?」という点です。
これは、勝手な思い込みですが「種の油分の役割の一つに発芽を抑制する働きがあり、逆に油分を抜くような刺激では発芽を促すのではないか?」と考えます。

御教授くださいますようお願い申し上げます。


姫野様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。 アボカドも最近はどこのスーパーへ行っても置いてあり、日本でも一般的な食材用果実として定着してきましたね。私も大好きでいろいろ料理して食べます。ずっと昔種子を鉢に植えたことがりました。ちゃんと発芽して3年ほどは育ち、観葉植物として楽しみましたが、結局枯らしてしまいました。地植えにして育てたら花が咲いたかもしれませんが、結実するにはうまくいって5〜6年はかかるようですね。それに私の住んでいる東京ではうまく育たないかもしれません。さて、お尋ねの件ですが、「油」というのは何を指すしておられるのかはっきりしません。果肉(種子=種を取り巻く食用になる部分)は確かに脂肪(油脂)分が非常に多いですね。森のバターと言われるくらいですから。「種子を綺麗に洗う」というのは種子を発芽させる前に、周りについている果肉を綺麗に洗い流すということではないでしょうか。アボカドに限らず果実の果肉には一般に種子の発芽を抑える物質が含まれています。植物ホルモンの一つであるはアブシシン酸その代表的な例です。果実が樹上で完熟し、中の種子も完成している時、そこで発芽が始まったらその植物のとって望ましくないですね。しかし、そういう例外も時々出くわすことがあります。グレープフルーツなど、中で種子が芽を出していたことはありませんか。アボカドの果肉に実際そのような物質が含まれているのか、またそれが何であるかということについての報告はないか調べてみましたが、はっきりとは分かりませんでした。ある論文では果肉(正式には中果皮=メソカープと言います)からある植物成長阻害物質を単離していますが、それが実際にアボカドの果実中で種子の発芽を抑えているのかどうか分かりません。また、果肉中には各種の酵素作用を阻害する物質や、カビなどを防御する物質のあることも報ぜられています。
アボカドの種子からの栽培についてはwebsite でたくさんの項目があります。 特に英語のサイトでは多いです。これらによると、種子からの発芽には特に問題はないようですね。アボカドを地方の特産品にできるかどうかは、沢山の果実が収穫できるかどうかにかかっているのではないでしょうか。アボカドにはとてもたくさんの品種がありますので、その中には当該地の環境条件に合ったものもあるかもしれません。実際的な栽培の問題は、国内でも暖地で生産されているところなどにノウハウを教えていただくのが一番良いと思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2017-08-14
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