一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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パプリカの色の違いは、何が原因か。

質問者:   小学生   小学5年生
登録番号3867   登録日:2017-08-20
家に赤と黄色のパプリカができたので、夏休みの自由研究で何が違うのか調べようとしました。顕微鏡で見たのですが、丸い形のものがたくさんあって、赤は全体が赤っぽく、黄色は全体が黄緑色で何が原因かわかりませんでした。市立図書館で調べようとしたのですが、参考になるものはみつかりませんでした。違う色のパプリカができるのはどうしてなのでしょうか。
小学5年生 様

 みんなのひろばの植物Q&Aにご質問をありがとうございます。
 図書館に行って調べたけれどわからなかったとのことですが、小学生にわかるような資料は、あまりないですね。でも、調べてみようとすることは、大事なことですね。

 にんじんの根の色はカロテンという色素によるということは、聞かれたことがあるのではないでしょうか?
 カロテンという物質はどんなものかと言いますと、炭素原子5個を骨格とする構造(イソペンテニル基といいます)を一つの単位として、それが8つ連なってできています。すなはち、40の炭素原子とそれに付いている水素原子から成り立っていることになります。
 イソペンテニル基のつながり方が異なったり、ある位置の水素原子がへっていたり、酸素を含む構造が付け加わったりと、カロテンに似ているがカロテンとは少し異なる物質もたくさん知られており、その数は300以上といわれています。このカロテンとは少し違うところがあるが、カロテンに似ている物質をカロテノイドと言います。カロテノイドには、赤色のもの、オレンジ色のもの、黄色のものなどがあります。
 赤色の果実の色がカロテノイドによるものの例としては、トマトのリコピンやトウガラシのカプサンチンがあります。パプリカはトウガラシと近縁な植物で赤い果実にはカプサンチンが含まれることがわかっています。ふつうカロテノイドで色のついた果実には数種のカロテノイドが含まれています。黄色の果実を作る品種では、カプサンチンの合成ができなくなって(合成されたものが分解して)、他のカロテノイドの色があらわれた可能性が考えられます。また、カプサンチンを合成する量が他のカロテノイドに比べて少ないため赤色にならない品種も考えられます。
 少し難しかったでしょうか?わからないことがありましたらまた質問して下さい。
 ごく短くまとめてみますと、赤いパプリカの果実の色はカプサンチンという赤色カロチノイドの色で、カプサンチンがないか、少ないと黄色くなるということです。

 なお、トウガラシの辛味はカプサイシンという物質によります。カロテノイドではありません。よく似ている名前ですので混同しないようにしたいと思います。
 花や果実の色はカロテノイドの他、アントシアニンによるものが多く知られています。アサガオの花の色やブドウの果実の色などがその例です。
 
JSPPサイエンスアドバイザー
庄野 邦彦
回答日:2017-08-23
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