一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ミニトマトが米のとぎ汁だけで上手く育たないのは、なぜ?

質問者:   一般   ゆうゆうの母
登録番号4153   登録日:2018-06-30
以前『野菜に米のとぎ汁だけをあげるのはダメ?(登録番号4072)』について、質問させていただいたゆうゆうの母です。

あの後、ミニトマトの苗をプランターに植え付けて、米のとぎ汁だけを与えながら育てています。(土は腐葉土と赤玉土を7:3に配合して使っています。)その他に、水だけを与えて育てるものと、液体肥料で育てるもの(間隔を一週間空けると記載してあるので、一週間以内に土が乾いた時は水を与える)もそれぞれ違うプランターに植えて、成長の違いを観察しています。
以前アボカドが米のとぎ汁だけを与えてグングン育ったので、ミニトマトも同じように育つのではないかと期待していたのですが、背丈は30㎝くらいで止まってしまい、葉の色もほとんどが黄色に変色してしまいました。葉の色が黄色に変色するのは、栄養不足が原因だと、野菜の苗を買ったお店の人に教えてもらいました。実は1つの苗に3つくらいなっていて、大きさ(直径2.5㎝くらい)や色(今はまだ緑色)は他の苗とほとんど変わりません。背丈や実の数、葉の色などは液体肥料で育てているものが一番なのは予想通りなのですが、水で育てるものよりも、米のとぎ汁で育てるものの方が上手く育つと予想していたのですが、ほとんど差が無いような感じです。米ぬかには、三大栄養素の窒素、リン酸、カリが含まれているから、栄養があると言えると思うのですが...

米のとぎ汁だけでグングン育ったアボカドの例や、他の人が米のとぎ汁だけで色々な野菜を上手く育てている例をインターネットや本で見たりするのですが、なぜ、我が家のミニトマトは米のとぎ汁だけでは上手く育たないのでしょうか?
米のとぎ汁だけで上手く育つ野菜と、そうでない野菜と相性のようなものもあるのでしょうか?
ゆうゆうの母 さん

前回ゆうゆうさんのご質問(登録番号4072)には米のとぎ汁は「米ぬかに大量の水を加えた懸濁液」との前提でお答えしたものです。主にミネラル成分の効用を取り上げたものでした。ところが、現在の精米法と精米度を見ると精米のとぎ汁のほとんどは「でん粉の薄い懸濁液」状態であることに気がつきました。米ぬかそのもの(玄米の最外層にある糊粉層と胚芽)に含まれるミネラル分はほとんど含まれていないと見なさざるを得ません。とすると液肥代わりにはなりません。水だけを与えたものと同じと思われます。
アボカドは元気に育ったけれどもトマトは育たなかったことから、「植物の種類」と「とぎ汁」との間に「相性」のようなものがあるのか、とのお尋ねですが、植物生理学的には「相性」に相当するものは「植物(作物)の種類による栄養要求性、成長特性の違い」と解釈できます。アボカド(クスノキ科、常緑木本)とトマト(ナス科、一年生草本)とでは成長生理的には違いすぎますので比較は無理です。問題はトマトの結果です。液肥はともかく、「水だけ」と「とぎ汁」との比較で、成長の具合にはあまり違いが無いようですが、「とぎ汁」だけでは葉が黄色に変色した点が理解に苦しみます。症状は栄養不足が考えられますが、腐葉土が十分ある培養土で栄養不足症状が現れるのも不思議なことです。「とぎ汁」はほとんど水と同じなのに、水だけでは葉が黄変する症状が現れないのですから「とぎ汁」のでん粉に原因を求めざるを得ません。含まれる生でん粉が土壌生物(細菌、菌類、小動物類など)にどのような影響を与えるかによって害になる場合があるかも知れません。
しかし「米のとぎ汁」といっても精米の方法、程度、「とぎ汁」の作り方などによって成分や濃度は一定ではありません。残念ながらこのように「条件の定まらない状況で起こる症状がどうして起こるのか」とのご質問には、信頼出来る情報が少なくお答え出来る状況ではないことをご理解いただきたいと思います。


今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-07-02
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