一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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黄色の花の色素

質問者:   中学生   きら
登録番号4192   登録日:2018-08-08
草木染で色々な植物を染色してきました。その結果、大体黄色になることが多く、色素が関係していることもわかりました。
植物の色素の中でも色んな種類がある黄色に着目し、黄色い花の染色実験をしています。
たとえば、マリーゴールドにはカロテノイドとフラボンがあるとか、チューリップにはカロチンがあるとかは調べてわかりました。
しかし、「オニタビラコ」の色素が何かがどうしてもわかりません。また「ガーベラ」の色素もカロテノイドとわかったのですが、カロチンなのかルテインなのか詳しいことがわかりません。

さらに、今後の事も考え、植物、花別の色素が書いてある本があれば教えて欲しいです。
きら さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
「草木染で色々な植物を染色してきました。その結果、大体黄色になることが多く」とのことですので媒染剤は使用しなかったとの前提でお答えします。植物性色素は大きく分けて、フラボノイド類(フラボン、フラボノール、オーロン、アントシアン類など)、カロテノイド類、ベタレイン類(アカザ、マツバボタンやヨウシュヤマゴボウなどの赤色素)、クロロフィルがありますが、ふつう草木染の染色液を作成する方法(水で煮て抽出する)では水溶性の色素であるフラボノイド類、ベタレイン類だけが溶出されます。この他、酸化されて褐色系の色素へ変化する無色の物質やそれらがすぐに酸化されて生成される色素が水(湯)抽出液には必ず含まれます。例えばカテキン類やクロロゲン酸、コーヒー酸などです。アントシアニン類を含む染色液では薄いピンクから赤系、褐色系(染色液の酸性度によって色は変わります)に染まりますが、ほとんどの場合は黄色から薄い褐色に染まります。黄色系の花の色素の多くはカロテノイドで細胞内では有色体と呼ばれる袋の中にあります。これはニンジン、トマトでも同じです。水では抽出されませんが、ミキサーなどでつぶしたときには有色体が壊れずに浮かんだ状態になります。野菜スムージーなどの状態です。この種のつぶし液を染色液として用いるとカロテノイドが布繊維に付着して着色するかも知れませんが安定した色調にはならないと思います。ただし、クチナシの赤色色素は水溶性のカロテノイド(クロシン)ですし、アルカリ性水溶液では加水分解されて溶け出すカロテノイド系色素もあります。草木染では、染色液の酸性度を調整したり、媒染剤を使用することで安定した色調を出している場合が多いものです。またこの過程では複数の化学成分(色素だけに限らない)が発色に関与しますので、求める色は経験的に得ることになります。花や葉に含まれる化学成分としての色素の色と染色された布の色とは一致するとは限りません。
オニタビラコやガーベラといった特定の植物の色素成分がすべて分析されているわけではありません。調査中に1つだけ見つかった、キク類のカロテノイドを分析した1967年の論文には「黄色花のガーベラ(Gerbera jamesonii)ではキサントフィル類(具体的物質名はなし)が主で、オレンジ系の花ではカロテン(α、β、γのどれかは記載なし)が主だが、黄色かオレンジ色かは主にカロテノイド全量の多寡による。また、ルテインは調べたすべてのキク類の葉には少量あるが、花にはほとんどない」との記載がありました。このように研究者はある目的をもって特定の植物の色素を分析することはあっても、網羅的に植物色素を記載したもの、例えば「植物、花別の色素が書いてある本」ような出版物は残念ながらないと思います。


今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-08-23
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