一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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葉のワックス、クチクラの厚さは生育環境で変わるのか

質問者:   自営業   みにはす
登録番号4242   登録日:2018-09-25
今年は雨が降らず高温、乾燥が長く続いた時がありました。その時に発芽した雑草は、同じ種類でも、適度に降雨がある時に生育する個体に比べ、高温、乾燥に耐えて生育するるため葉のワックス層、クチクラ層が厚くなる事はあるのでしょうか。
みにはす さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
本年は全国的な異常高温と多くの地域での多雨で農業に大きな影響が出ています。植物地上部の表面は、クチクラ層あるいはコルク層といった防御的障壁で覆われています。クチクラ層は、脂質や高級脂肪酸などから出来ているワックス、不飽和高級脂肪酸などの重合体であるクチンから構成され、水、空気の透過を制限するばかりでなく、病害微生物の侵入をも抑制しています。したがって、クチクラ層の組成、厚さなどは生育環境に大きく左右されます。ご質問にあるように、高温、乾燥状態では体内の水の損失を防ぐ(水の透過性を抑制する)応答としてクチクラ層のワックス沈着を多くすることは多くの植物で明らかにされています。但し、クチンやワックスの合成の程度は植物種、品種によって大きく異なることも調査で明らかにされていますので、同じ条件に置かれた植物種全部が同じようなクチクラ層合成反応をするとは限りません。さらに、クチクラ層は農薬などの化学物質の投与が続いたとき、病害菌の侵入時などにもワックス、クチンの合成が高まって化学薬品の吸収、病原菌のさらなる侵入を抑制することも明らかにされています。日光の強い(紫外線も多い)」地域ではワックス合成が盛んになり表面が照り輝くことはよく知られていることです。



今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-10-11
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